英国に学ぶ、クリーンエネルギーサプライチェーン戦略:官民連携による製造業の競争力強化

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英国では、クリーンエネルギー関連のサプライチェーンを国内に構築し、国家の新たな強みとするための戦略が検討されています。その核となる「官民連携モデル」は、脱炭素という大きな潮流に直面する日本の製造業にとっても、重要な示唆を与えてくれるでしょう。

はじめに:国家戦略としてのサプライチェーン構築

世界的な脱炭素化の流れは、各国のエネルギー政策だけでなく、産業政策にも大きな影響を与えています。英国のコンサルティングファームGuidehouseが提示する戦略は、再生可能エネルギーへの転換を、単なる環境対応やエネルギー安全保障の問題としてだけでなく、国内製造業の競争力を再強化する好機と捉えている点が特徴です。風力タービン、太陽光パネル、蓄電池といったクリーンエネルギー関連機器の需要が世界的に拡大する中で、その生産体制、すなわちサプライチェーンをいかに国内に構築するかが、将来の国富を左右する重要な課題であると位置づけられています。

戦略の核となる「官民連携モデル」

この戦略の要諦は、「官民連携(Public-Private Model)」にあります。これは、政府と民間企業がそれぞれの役割を明確にし、連携して市場を創造していくアプローチです。政府は、長期的なエネルギー政策の方向性を示し、需要の予見可能性を高めることで、民間企業が安心して大規模な設備投資を行える環境を整備します。また、初期投資のリスクを低減するための財政支援や、研究開発拠点への投資、関連インフラの整備なども政府の重要な役割となります。一方で、民間企業は、持ち前の技術力、生産ノウハウ、効率的な工場運営能力を最大限に発揮し、グローバルで競争力のある製品を供給することが期待されます。これは、単なる補助金頼みの産業振興とは一線を画し、持続可能な産業エコシステムを構築することを目指すものです。

サプライチェーン全体での付加価値創出

クリーンエネルギー関連産業の裾野は非常に広く、最終製品の組み立てだけでなく、特殊な素材や精密部品、製造装置、さらには設置後のメンテナンスサービスまで多岐にわたります。英国の戦略が目指すのは、こうしたサプライチェーン全体を国内に根付かせることです。これにより、一部の大企業だけでなく、多くの中小企業にも新たな事業機会が生まれ、質の高い雇用が創出され、国内の技術基盤そのものが強化されることになります。日本の製造業が長年培ってきた、いわゆる「すり合わせ」の技術や、系列を超えた協力関係といった強みは、こうした複雑なサプライチェーンを構築・運営する上で大きな力となり得ると考えられます。

日本の製造業への示唆

この英国の戦略的アプローチは、カーボンニュートラルへの対応を迫られている日本の製造業にとっても、多くの学びがあります。以下に、実務的な観点からの示唆を整理します。

1. 視点の転換:コストから事業機会へ
脱炭素化への対応を、規制強化やコスト増加といった受動的なものとして捉えるのではなく、自社の技術やノウハウを活かせる新たな事業領域と捉え直す視点が重要です。特に、部材や製造装置の分野では、日本のものづくり企業が持つ精密加工技術や品質管理能力が活かせる場面は少なくありません。

2. 政策の活用と戦略的連携
日本でもGX(グリーン・トランスフォーメーション)を推進するための様々な政策が打ち出されています。これらの政策を単なる補助金として利用するだけでなく、自社の長期的な事業戦略の中にどう位置づけるかを考える必要があります。また、自治体や業界団体、異業種の企業と連携し、地域単位でのサプライチェーン構築を主導していくことも有効な一手となり得ます。

3. サプライチェーンの再評価と再構築
自社の製品が、将来的にクリーンエネルギー関連のサプライチェーンにおいてどのような役割を果たせるかを評価することが求められます。既存事業で培った技術の応用可能性を探るとともに、必要であれば新たな技術開発やM&Aも視野に入れた、能動的なサプライチェーンへの参画が、将来の成長の鍵を握るでしょう。

4. 人材育成と技能伝承
新たな産業分野への挑戦は、新たなスキルを持つ人材を必要とします。社内での再教育(リスキリング)はもちろん、産学官連携による次世代の人材育成にも積極的に関わっていくことが、持続的な競争力に繋がります。変化に対応できる柔軟な組織と、それを支える人の育成が、これまで以上に重要となります。

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