米自動車部品メーカーの事例に学ぶ、将来の生産を確保するための受注戦略

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自動車業界が大きな変革期にある中、部品メーカーは目先の生産だけでなく、数年先を見据えた事業の「仕込み」を迫られています。米国の部品メーカーStrattec社の事例から、将来の収益性を確保するために極めて重要となる、開発段階での受注獲得の考え方について考察します。

背景:変革期にある自動車部品業界

ご存知の通り、自動車業界はEV化の進展、サプライチェーンの再編、そして原材料価格の高騰といった、かつてないほどの大きな変化に直面しています。これは、完成車メーカー(OEM)だけでなく、その裾野に広がる私たち部品メーカーにとっても、事業のあり方そのものを見直すことを迫られる厳しい環境と言えるでしょう。このような状況下で、多くの企業が収益性の改善を喫緊の経営課題として掲げています。

先行開発段階での受注獲得の重要性

米国の自動車部品メーカーであるStrattec Technologies社の経営状況に関する分析記事の中に、我々日本の製造業にとっても示唆に富む一節がありました。それは、「将来の生産に備えるためには、今、その仕事(受注)を勝ち取ることが極めて重要である」という点です。同社の経営陣は、投資家向けの電話会議のたびにこの点を強調しているとされています。

ここで言う「今、仕事を勝ち取ること」とは、単に目先の生産オーダーを獲得することだけを指しているわけではありません。これは、自動車メーカーが数年後に市場投入する次期モデルの開発段階において、自社の部品が採用されるための活動、いわゆる「先行受注」や「開発案件の獲得」を意味するものと捉えるべきです。自動車業界では、一度プラットフォームや主要なモジュールに採用されると、その車種のモデルライフを通じて、5年から7年、あるいはそれ以上の期間にわたり安定的な供給が見込めます。つまり、開発段階での勝敗が、将来の工場の稼働、ひいては事業の存続を大きく左右するのです。

「将来の工場」は、今日の開発・営業活動で決まる

Strattec社の経営陣がこの点を繰り返し強調するのは、将来の事業基盤を確固たるものにするという強い意志の表れでしょう。設計・開発の初期段階で顧客に入り込み、自社の技術力や生産ノウハウを提案し、仕様に織り込んでもらう。この活動こそが、将来の量産受注という果実を生み出します。逆に見れば、この段階で競合に敗れることは、数年後の仕事そのものを失うことを意味します。

この視点は、日々の生産活動に追われる現場にとっては、やや遠い話に聞こえるかもしれません。しかし、将来の設備投資計画、人員計画、そして技術開発の方向性といった、工場運営の根幹に関わる重要な意思決定は、すべてこの先行開発段階での受注活動の結果に紐づいています。経営層がこの重要性を全社に伝え、開発、営業、生産技術、品質保証といった各部門が一体となって顧客に向き合う体制を構築することが、いかに重要であるかを示唆しています。

日本の製造業への示唆

この事例から、私たち日本の製造業、特に自動車部品メーカーが改めて認識すべき要点を以下に整理します。

1. 受注活動の重点を、量産段階から開発段階へ
量産開始後の原価低減活動もさることながら、将来の収益を決定づけるのは、開発・設計段階でのVAVE(価値分析・価値工学)提案です。顧客の課題を深く理解し、より付加価値の高い部品を共同で作り上げていく姿勢が、競合との差別化に繋がります。営業部門と技術部門のより一層の連携が求められます。

2. 将来の受注見込みの可視化と管理
現在の受注残や短期的な生産計画だけでなく、「3年後、5年後の量産に繋がる開発案件」がどれだけ進行しているかを、経営の重要指標として管理することが有効です。これにより、中長期的な視点でのリソース配分や戦略的な投資判断が可能になります。

3. 全社的な危機意識と目的の共有
「将来の仕事は、今日の活動で決まる」という意識を、経営層から現場の担当者まで、すべての従業員が共有することが不可欠です。なぜ今、この開発案件に注力するのか。その目的と重要性をトップが繰り返し発信し続けることで、組織は一つの方向を向いて力を発揮することができます。

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