米国の事業会社がSEC(証券取引委員会)に提出した四半期報告書の中に、生産管理上の課題として「原材料供給地の歴史的な変動性」という記述が見られました。この一文は、今日の製造業が直面するサプライチェーンの脆弱性を象徴しており、我々日本のものづくりにとっても重要な示唆を与えてくれます。
米国企業の報告書が示すサプライチェーンの現実
先日公開された米国企業CHASE GENERAL CORPの四半期報告書(Form 10-Q)において、事業リスクの一つとして「原材料が栽培・供給される地域における歴史的な変動性」が生産管理に影響を与えている旨が記載されました。Form 10-Qは投資家向けに事業の状況やリスクを正式に開示する公的な文書であり、このような記述がなされること自体が、原材料の安定調達が経営上の重要課題であることを示しています。これは、特定の企業の特殊な事例というより、グローバルに事業を展開する多くの製造業が共有する悩みと言えるでしょう。
「変動性(Volatility)」が意味するもの
ここで言う「変動性」とは、単なる価格の上下動だけを指すものではありません。むしろ、より広範で予測が困難なリスク要因を含んでいます。具体的には、地政学的リスク(紛争、貿易摩擦、政情不安)、異常気象(干ばつ、洪水)による不作、現地の労働問題、インフラの未整備や老朽化、あるいは感染症の拡大といった、供給を不意に途絶させかねないあらゆる事象が含まれます。特に、特定の地域や国に産出が偏在する鉱物資源や、天候に収穫が左右される農産物由来の原料などを扱う業種では、この変動性は常に念頭に置くべき経営リスクとなります。
日本の製造業における調達リスク管理の現在地
日本の製造業は、これまでも品質、コスト、納期(QCD)を追求する中で、サプライヤーとの密な連携や複数社購買(ダブルソーシングなど)といった手法で調達リスクに対応してきました。しかし、近年のパンデミックや国際情勢の緊迫化は、従来の想定を超える規模と速度でサプライチェーンを寸断し、これまでの対策だけでは不十分であることが露呈しました。特定の国からの部品供給が滞り、生産ラインの停止を余儀なくされた経験は、多くの工場にとって記憶に新しいところです。事業継続計画(BCP)の重要性が再認識される中、調達における「変動性」への備えは、守りの一手であると同時に、企業の競争力を維持するための必須要件となりつつあります。


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