世界有数の食品ブランドであるハーゲンダッツが、製造拠点を中心とした具体的な脱炭素戦略を発表しました。本稿では、その目標と取り組みを紐解きながら、日本の製造業が実務レベルで何をすべきか考察します。
ハーゲンダッツが掲げる、長期的かつ具体的な削減目標
昨今、世界中の企業で脱炭素化への取り組みが加速していますが、プレミアムアイスクリームブランドとして知られるハーゲンダッツも例外ではありません。同社は、自社の事業活動に起因する温室効果ガス(GHG)排出量について、2030年までに30%、さらに2050年までには60%削減するという、長期的かつ具体的な目標を掲げています。これは、単なる努力目標ではなく、事業戦略の根幹に関わるコミットメントとして位置づけられていると考えられます。
製造現場における脱炭素のキードライバー
目標達成に向けた重要な柱の一つが、製造現場における取り組みです。記事によれば、その主要な手段として「化石燃料の使用削減」が挙げられています。これは、多くの日本の製造工場にとっても共通の課題と言えるでしょう。具体的には、蒸気や熱を供給するボイラーの燃料転換(重油から都市ガス、さらには電化へ)、生産設備の動力源となる電力の再生可能エネルギーへの切り替え、コンプレッサーやポンプなどユーティリティ設備の高効率化(インバータ化など)といった施策が考えられます。
特にハーゲンダッツのような食品工場では、加熱・殺菌工程での熱エネルギーや、冷凍・冷蔵工程での電力消費が大きな割合を占めます。これらのプロセスにおけるエネルギー使用量を地道に計測・分析し、断熱強化や運用方法の見直し、より効率的な設備への更新といった、現場レベルでのカイゼン活動を継続することが、排出量削減の着実な一歩となります。
工場単体からサプライチェーン全体への視点
ハーゲンダッツの取り組みは、グローバルな製造拠点が対象となっており、これは自社工場(Scope1およびScope2)の排出量削減に留まらないことを示唆しています。現代の製造業における環境経営は、原材料の調達から生産、物流、そして消費・廃棄に至るサプライチェーン全体(Scope3を含む)での排出量を把握し、削減していく視点が不可欠です。例えば、酪農家から調達する牛乳など、原材料の生産過程における環境負荷をいかに低減していくか、サプライヤーと協働していく姿勢が問われます。これは、日本の製造業においても、特に大手企業との取引がある中小企業にとって、決して他人事ではありません。
日本の製造業への示唆
今回のハーゲンダッツの事例から、日本の製造業が学ぶべき点は多岐にわたります。以下に要点を整理します。
1. 長期的かつ具体的な目標設定の重要性
経営層が「2030年にX%削減」といった明確な数値目標とタイムラインを示すことで、全社的な取り組みの方向性が定まり、現場での具体的なアクションプランにつながります。漠然としたスローガンに終わらせない意志が重要です。
2. 現場改善活動との連動
脱炭素は、大規模な設備投資だけで達成できるものではありません。日々の生産活動におけるエネルギーの「見える化」を進め、無駄をなくしていく地道な改善活動の積み重ねが不可欠です。これは、品質管理や生産性向上で培ってきた、日本の製造現場が持つ強みを活かせる領域です。
3. サプライチェーン全体での協働
自社の取り組みだけでなく、仕入先や顧客と連携し、バリューチェーン全体で環境負荷を低減していく視点が求められます。今後、取引条件として環境対応を求められるケースはますます増えていくでしょう。
4. 環境対応をコストではなく競争力と捉える
脱炭素への取り組みは、短期的に見ればコスト増となる側面もあります。しかし、長期的に見れば、エネルギーコストの削減、企業ブランド価値の向上、新たなビジネス機会の創出など、企業の持続的な成長と競争力強化に繋がる戦略的投資であると捉えるべきでしょう。


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