米国アラバマ州の製造業団体が、一般投票によって州内で最も「クールな製品」を選ぶユニークなコンテストを開催しています。この取り組みは、日本の製造業が直面する広報、人材確保、従業員の士気向上といった課題を考える上で、多くの示唆を与えてくれます。
地域を巻き込む「最もクールな製品」コンテスト
米国アラバマ州の製造業団体「Manufacture Alabama」が、州内で製造された製品の中から、一般市民の投票によって「最もクールな製品」を決定するコンテスト『Manufacturing Madness』を昨年に続き開催すると発表しました。これは、トーナメント形式で候補製品が競い合い、最終的に優勝製品が決まるという、ユニークな企画です。
単に技術力や市場シェアを競うのではなく、「クール(かっこいい、素晴らしい)」という主観的な評価軸を設けている点が特徴的です。これにより、専門家だけでなく、地域住民や若者など、幅広い層が関心を持ち、楽しみながら地域の製造業に触れる機会を創出しています。
取り組みの背景にある狙い
このような一般参加型のコンテストには、いくつかの重要な狙いがあると考えられます。第一に、地域における製造業の認知度向上とイメージアップです。私たちの多くがそうであるように、BtoB製品が中心の企業や、最終製品に社名が出ない部品メーカーなどは、その技術力の高さにもかかわらず、地域社会での認知度は必ずしも高くありません。このコンテストは、地元で「こんなにすごい製品が作られていたのか」という発見と驚きを生み出し、地域産業への誇りを醸成する効果が期待できます。
第二に、次世代を担う人材の確保に向けたアピールです。製造業と聞くと、いわゆる「3K」のイメージを抱く若者も少なくありません。しかし、「クールな製品」という切り口で自社の製品や技術を紹介することは、旧来のイメージを払拭し、ものづくりの魅力や創造性を伝える絶好の機会となります。特に、学生やその保護者に地元の優れた企業を知ってもらうきっかけとして、採用活動にも間接的に貢献するでしょう。
そして第三に、従業員のエンゲージメント向上です。自分たちが日々製造に携わっている製品がコンテストにノミネートされ、多くの人々から応援されるという経験は、従業員にとって大きな誇りとなります。自社の仕事が社会から注目され、評価されることは、仕事へのモチベーションや会社への帰属意識を高める上で、非常に有効な施策と言えます。
日本の製造現場における可能性
このアラバマ州の事例は、日本の製造業にとっても示唆に富んでいます。日本では、各地域に世界に誇る技術を持つ中小企業が数多く存在します。しかし、その魅力が十分に伝わりきれていないのが実情ではないでしょうか。
例えば、地域の商工会議所や工業団体が主体となり、自治体や教育機関と連携して、同様のコンテストを企画することも考えられます。「我が町のイケてる製品選手権」のような形で、地元の製品をPRし、子どもたちの社会科見学やキャリア教育のテーマとして活用することもできるでしょう。こうした活動は、企業のブランディングだけでなく、地域全体の活性化にもつながる可能性を秘めています。
日本の製造業への示唆
今回の米国の事例から、日本の製造業が実務に活かせる点を以下に整理します。
1. 広報・PR活動の新しい視点
従来の業界内向けの技術アピールだけでなく、一般市民や若者に向けて「わかりやすく、魅力的に」伝える広報戦略が重要です。「技術力」を「クールさ」や「社会への貢献」といった言葉に置き換えて発信する工夫が、企業の認知度とブランドイメージを向上させます。
2. 人材確保への間接的アプローチ
採用難が続く中、求人広告を出すだけでは人材の確保は困難です。地域社会に自社の魅力を継続的に発信し、将来の担い手候補である学生やその家族に「面白そうな会社」「誇りを持てる会社」という印象を育んでもらう、長期的な視点でのブランディング活動が求められます。
3. 従業員の士気向上策としての活用
社内での表彰制度や改善活動も重要ですが、こうした社外を巻き込んだイベントは、従業員に新たな刺激と誇りをもたらします。自社の製品が地域社会から評価されるという体験は、何よりのインナーブランディング(組織内部のブランディング)となり得ます。
4. 地域連携による価値創造
単独の企業で取り組むには限界があっても、地域の業界団体や自治体と連携することで、より大きなインパクトを生み出すことができます。地域全体で製造業を盛り上げるという機運を醸成することが、個々の企業の持続的な成長にもつながっていくでしょう。


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