人材紹介の費用は原則「理論年収×料率(目安25〜35%)」で、返金保証は30/60/90日などの段階返金が主流。相場は職種の希少性・地域・緊急度で上下し、契約では「理論年収の定義/返金の条件と除外/請求タイミング/直接採用条項」を必ず文書で明確化することが最重要です。
手数料の基本:モデルと例外
- 完全成功報酬(コンティンジェンシー):最も一般的。入社決定時に請求。
- リテインド(エグゼクティブ):着手金+中間金+成功報酬の3分割など。経営層・高度専門職向け。
- 最低手数料:年収が低い場合でも一定額以上を下限として規定するケース。
- ボリュームディスカウント:複数ポジション・独占案件で料率を調整。
相場の目安(2025年版)
ポジション/難易度 | 目安料率 | 備考 |
---|---|---|
一般〜中堅(バックオフィス/営業) | 25〜30% | 地域・母集団により変動 |
技術職(製造/IT/機電/QA/SCM) | 28〜35% | 希少スキル・交替勤務で上振れ |
管理職/部長クラス | 30〜35% | 機密性・サーチ負荷が高い |
経営層/エグゼクティブ | 33〜40% | リテインド契約が多い |
相場は希少性×地域×緊急度×独占度で決まります。独占/準独占の委託や複数枠コミットで、料率や返金条件の交渉余地が生まれます。
計算式と「理論年収」の定義
基本式:
手数料 = 理論年収 × 料率
理論年収(例)
- 月給×12
- 固定賞与(会社規定の年2回等)
- 固定手当(役職・住宅・固定残業を含む場合あり)
- ※変動賞与・インセン・通勤費は除外する規定が一般的(要契約確認)
計算例
- 年収600万円 × 30% = 180万円(税別)
- 年収520万円 × 28% = 145.6万円(税別)
オファー時の変更
- 年収が内定交渉で増減した場合は、最終提示額を基準に再計算するのが通例。規定を契約に明記。
返金保証の設計(全額/段階/代替)
主なタイプ
- 全額返金:入社〜30日以内の自己都合退職等で100%返金。
- 段階返金:30/60/90日で100%/66%/33%などの逓減。
- 代替紹介(リプレース):返金ではなく無償で再推薦(一定期間)。
トリガー(例)
- 対象:自己都合退職/合意退職など。
- 除外:会社都合(整理解雇/配置転換/労働条件大幅変更)、天災・不可抗力、当人の責めに帰さない理由 等。
- 返金方法:現金返金/次回請求の相殺を選択可能にする規定が多い。
段階返金のモデル表
退職時期 | 返金率(例) |
---|---|
入社〜30日 | 100% |
31〜60日 | 66% |
61〜90日 | 33% |
91日以降 | 0% |
実務Tip:返金の対象は請求金額(税抜)とし、支払済の場合の返金フローと相殺の可否を条文化。代替紹介に切替える場合の期限と同等ポジションの定義も明記。
請求・支払・違約の注意点
- 請求タイミング:入社日を基準に請求/試用期間終了時請求は少数派。
- 支払サイト:月末締め翌月末(又は翌々月)など。返金が発生した場合の期日をセットで規定。
- 選考中止/求人撤回:成功報酬型では通常費用発生なし。リテインドは着手金返金の有無を明確に。
- 直接採用条項(後日採用):紹介後12〜24か月以内に直接雇用した場合は所定料率で請求。トラッキング方法(候補者ID/メール等)を合意。
- 競合避止/引抜き禁止:紹介会社が在籍社員の引抜きを行わない等の相互条項。
- 秘密保持・個情法対応:履歴書・職歴の保存期間、破棄方法、目的外利用禁止を明記。
シナリオ別コスト比較(モデル)
- 恒常戦力の採用(生産技術)
年収650万 × 30%=195万(返金90日/段階)
→ 早期退職(45日目)発生:返金率66% → 128.7万返金 → 実質負担66.3万 - 複数枠コミット(3名)
料率28%で合意/うち1名は独占 → 年収平均580万 → 580×0.28×3=487.2万 - リテインド(部長クラス)
600万×35%=210万(着手30%/中間30%/成功40%)→ 不成立で終了:着手・中間は返金なし
交渉のコツ(費用とリスクを最適化)
- 料率は枠数と独占度で調整:複数枠・独占・採用計画の共有で**28〜30%**を狙う。
- 返金は「段階+代替紹介」の併用:早期は返金、後期は代替に切替えてスピード確保。
- 理論年収の定義を固定:固定残業・住宅手当・固定賞与の含む/含まないを明記。
- KPIで長期関係に:TTF・通過率・承諾率・90日定着率を共有、改善と料率の連動を提案。
- 請求は入社基準+相殺可:返金発生時の相殺/現金返金の選択肢を確保。
契約チェックリスト(コピペ可)
- 料率(%)/最低手数料(円)
- 理論年収の内訳(固定/変動/手当の扱い)
- 請求タイミング(入社基準/試用明け)・支払サイト
- 返金の範囲(対象事由/除外事由/段階返金表)
- 代替紹介の条件(同等ポジションの定義/期限)
- 直接採用条項(有効期間/トリガー/証跡)
- 秘密保持・個人情報・データの扱い
- 競合避止/引抜き禁止の範囲
- 紛争解決(管轄/準拠法)
よくある質問(FAQ)
Q. 返金保証はどの程度が相場?
A. 30/60/90日の段階返金(100%/66%/33%)が一例。ポジション難易度によって変動します。
Q. 理論年収に固定残業や住宅手当は含みますか?
A. 取り扱いは契約次第。固定手当は含むケースが多いですが、変動手当や通勤費は除外が一般的です。
Q. 入社前の内定辞退は請求対象?
A. 通常は対象外。ただし入社前のキャンセル料規定を置く紹介会社もあるため契約確認を。
Q. 直接採用条項はどのくらい有効?
A. 12〜24か月が一般的。候補者情報と採用の因果を証跡で紐づけできるかがポイントです。
Q. 複数名同時採用のディスカウントは?
A. 複数枠コミットや独占で2〜5pt程度の料率調整が交渉余地。代替紹介の優先度引き上げ等の非金銭条件も有効。
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