この記事の要点: スイスの時計ブランド「スウォッチ」がオーデマ ピゲとコラボレーションした「ロイヤル ポップ」の製造を裏で支えるのが、ETA社の高度に自動化された生産工場です。本記事では、スイスのボンクールにあるムーブメント工場「Sistem51」と、グレンヘンにある外装部品工場「W18」の内部に密着。手巻きキャリバーの自動混流生産や、独自素材「バイオセラミック」の射出成形など、大量生産を支える製造技術の最前線を解説します。
ニュースのポイント
- 同一ラインで異なるムーブメントをプログラム制御により混流生産する柔軟性
- 2/3のセラミック粉末と1/3のバイオ素材を混練・ペレット化する内製プロセス
- 画像認識カメラによる全工程での品質管理と、パッド印刷による精密な加飾技術
背景
スウォッチの「Sistem51」工場は、伝統的な手作業による時計製造とは対照的に、徹底した工業化と自動化を追求した生産拠点です。今回、オーデマ ピゲとのコラボモデル「ロイヤル ポップ」の投入に伴い、新たに2種類の手巻きキャリバーが生産ラインに加わりました。これに対応するため、工場では設備を増強するのではなく、既存の自動化ラインの制御プログラムを切り替えることで、効率的な多品種混流生産を実現しています。
何が起きたのか
ムーブメントを製造するボンクール工場では、UVプリンターを用いて50個のキャリバーをトレイに載せたまま一括でポップアート装飾を施すプロセスが導入されています。一方、外装部品を担うグレンヘン工場では、酸化ジルコニウム粉末とヒマシ油由来のバイオプラスチックを加熱混練し、射出成形用の「バイオセラミック」ペレットを内製しています。この工場では、複雑なタペストリーパターンの文字盤をバイオセラミックの射出成形によって再現しており、金型技術の高さが伺えます。成形された部品は、何層ものラッカー塗装と精密なパッド印刷を経て仕上げられます。
製造業・生産管理への見方
本事例は、多品種少量生産と大量生産を両立させる現代の製造DXおよび生産管理の好例です。専用の生産ラインを新設することなく、同一ライン上でプログラム制御によって異なる製品(手巻き・自動巻き、異なる竜頭位置)を識別・組み立てる仕組みは、段取り替えのロスを最小限に抑える参考になります。また、全工程に配置されたカメラによる自動外観検査(光学検査)と、要所での目視検査を組み合わせた品質管理体制は、工場の省人化と高品質維持を両立させるうえで極めて示唆に富んでいます。
現場で確認したいポイント
- 既存ラインを活かした多品種混流生産における、プログラム切り替えの制御手法
- 新素材(バイオセラミック等)の調合からペレット化、射出成形までの一貫した内製化体制
- インラインカメラによる自動外観検査と、人手による官能検査の最適な役割分担
確認しておきたい点
本記事で紹介されている製造プロセスや自動化の取り組みはスイスのETA社工場における事例であり、すべての時計製造や他業界の射出成形プロセスにそのまま適用できるわけではありません。
出典情報
| 出典 | Hodinkee |
|---|---|
| 公開日時 | 2026-09-04T13:00:00-04:00 |
| 元記事 | Hodinkeeで読む |