この記事の要点: 経済政策研究センター(CEPR)が発表した論文によると、米国製造業の生産性上昇率は1987〜2010年の年平均プラス3.3%から、2010〜2023年にはマイナス0.3%へと急落しました。この停滞の起点として、2000年頃から始まった輸入の急増が指摘されています。安価な輸入品の流入が国内工場の閉鎖や利益圧迫を招き、それが設備投資や研究開発(R&D)の縮小、さらにはイノベーションの衰退へとつながる負の連鎖を引き起こしたと分析されています。
ニュースのポイント
- 2010年以降の米国製造業における生産性上昇率がマイナス0.3%に転落
- 2000年からの輸入急増が国内工場の閉鎖や稼働率低下、投資抑制を誘発
- 自社株買いへの資金流出や政府の公的R&D削減、技能人材不足の放置も影響
背景
米国製造業では、2010年以降に生産性の伸びが突如として消失したことが謎とされてきました。本論文では、その根本原因を2010年ではなく、生産量が伸び悩むようになった2000年まで遡って分析しています。この時期に発生した海外からの「輸入の急増」が、米国内の生産基盤を揺るがし、雇用を奪い、企業の収益性を悪化させる直接的な契機になったと結論付けています。
何が起きたのか
輸入急増に端を発した負の連鎖は、工場の稼働率低下をもたらし、固定資産やR&Dへの投資意欲を減退させました。さらに企業側にも問題があり、生産的な投資に回すべき資金が自社株買いへと流出したほか、環境や安全、燃費に関する規制が投資の歪みを生んだとされています。政府側も公的R&D予算を大幅に削減し、長年の課題である技能労働者不足を解消するための訓練プログラム開発を怠ったことが、生産性低下に拍車をかけました。
製造業・生産管理への見方
本研究は、製造業における生産性向上が、単なる現場の改善活動だけでなく、適切な設備投資やR&D、そして人材育成の継続的な実施に支えられていることを示しています。安価な競合品の流入に対して、投資を縮小して目先の利益確保(自社株買いなど)に走ることは、中長期的な技術革新力や生産性を損なうリスクがあります。日本の製造業にとっても、サプライチェーンの維持や国内生産基盤への投資、技能伝承のための人材育成が、長期的な競争力を維持するために不可欠であるという教訓を示しています。
現場で確認したいポイント
- 競合品の流入に対し、目先のコスト削減だけでなく中長期的な設備・R&D投資が維持されているか
- 現場の生産性を支える技能人材の育成や確保に向けた、具体的な教育プログラムがあるか
- 法規制への対応投資が、本来行うべき生産性向上のための設備更新を阻害していないか
確認しておきたい点
本内容は米国製造業のデータを基にしたマクロ経済的な分析であり、個々の産業分野や日本国内の状況にそのまま当てはまらない場合があります。
出典情報
| 出典 | CEPR |
|---|---|
| 公開日時 | 2026-06-21T22:45:56Z |
| 元記事 | CEPRで読む |