インサート成形技術の再評価:異材結合による部品の高付加価値化と軽量化

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インサート成形は、金属部品などを樹脂で一体化する技術であり、古くから活用されてきました。近年の製品に対する小型化・軽量化・高機能化の要求を背景に、この技術が改めて注目されています。本稿では、インサート成形の基本とメリット、そして導入における実務的な留意点を解説します。

インサート成形とは何か

インサート成形とは、射出成形金型の中に、あらかじめ金属やセラミックス、あるいは別種の樹脂でできた部品(インサート品)を配置し、その周囲に樹脂を射出して一体化させる成形方法です。身近な例では、ドライバーのグリップ部分(樹脂)と先端の金属シャフトの結合や、電子部品の端子部分の封止などに広く用いられています。単に部品を埋め込むだけでなく、ネジやナットなどの締結部品を一体成形することで、後の組立工程を不要にする目的でも多用される、製造現場にとって馴染み深い技術の一つと言えるでしょう。

インサート成形がもたらす主なメリット

この技術を活用することで、製造業は多岐にわたるメリットを享受できます。特に重要な点をいくつか挙げます。

1. 部品点数の削減と組立工程の簡素化
最大のメリットは、後工程である組立作業を大幅に削減できる点です。従来、ネジ止めや接着、圧入などで行っていた複数の部品の結合を、成形工程内で完結させることができます。これにより、組立工数の削減によるコストダウン、管理部品点数の削減、そして生産リードタイムの短縮が期待できます。

2. 製品の小型化・軽量化
締結部品が不要になることで、製品設計の自由度が高まり、よりコンパクトで軽量な製品開発が可能になります。特に、軽量化が至上命題である自動車産業や、小型化が求められるエレクトロニクス分野において、インサート成形は非常に有効な手段となります。

3. 強度と信頼性の向上
樹脂とインサート品が分子レベルで強固に結合(アンカー効果や接着性)するため、機械的強度が向上します。金属の強度・剛性と、樹脂の形状自由度や絶縁性といった、異なる材料の長所を組み合わせることが可能です。また、接合部が一体化されることで、気密性や防水性、防振性といった機能的な信頼性も高まります。

導入・運用における実務的な留意点

多くのメリットがある一方で、インサート成形を導入・運用する際には、現場視点でのいくつかの留意点が存在します。

・金型設計の複雑化とコスト
インサート品を金型内で正確に位置決めし、保持するための機構が必要となるため、金型構造は通常の成形金型よりも複雑になります。これにより、金型の設計・製作コストは高くなる傾向があります。金型メーカーとの綿密な技術的すり合わせが、成功の鍵を握ります。

・インサート品の精度管理
インサート品の寸法や形状のばらつきは、金型内での保持不良や、成形後の製品不良(樹脂の漏れ、インサート品の位置ずれなど)に直結します。そのため、インサート品の受け入れ検査基準を厳格に定め、安定した品質の部品を確保するサプライヤー管理が不可欠です。

・生産サイクルと自動化
インサート品を金型へセットする工程が発生するため、通常の射出成形に比べてサイクルタイムが長くなる場合があります。この工程を人手で行うか、ロボットなどで自動化するかの判断は、生産量やコスト、品質安定性の観点から慎重に検討する必要があります。特に多数個取りの金型では、インサート品の供給・セットの自動化が生産性を大きく左右します。

・異材界面の品質管理
金属と樹脂など、熱膨張係数が大きく異なる材料を組み合わせる場合、温度変化によって内部に応力が発生し、クラックや剥離の原因となることがあります。材料の選定や成形条件の最適化、接合界面の設計など、材料力学的な知見に基づいた品質管理が求められます。

日本の製造業への示唆

インサート成形は決して新しい技術ではありませんが、その応用範囲は広く、今日の製造業が直面する課題解決に大きく貢献するポテンシャルを秘めています。

・既存製品のコストダウンと付加価値向上
現在、複数の部品を組み立てて製造している製品があれば、インサート成形による一体化を検討する価値は十分にあります。単純なコスト削減だけでなく、信頼性の向上や軽量化といった付加価値を同時に実現できる可能性があります。

・成長分野におけるキーテクノロジーとして
特にEV(電気自動車)関連の部品では、モーターやバッテリー周辺のバスバー、コネクター、センサー部品など、絶縁性と導電性、強度を両立させる必要のある部品が数多く存在します。インサート成形は、こうした要求に応えるための重要な基盤技術です。

・設計と生産技術の連携強化
インサート成形のメリットを最大限に引き出すには、製品設計の初期段階から生産技術部門が関与し、成形性や金型構造を考慮した設計(Design for Manufacturability)を行うことが不可欠です。部門の垣根を越えた連携が、競争力のある製品を生み出します。

技術の本質を理解し、そのメリットと課題を正しく把握した上で、自社の製品や生産体制に適用していくことが、これからのものづくりにおいて一層重要になるでしょう。

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