豪州のGX政策にみる、エネルギーインフラの国内製造回帰という潮流

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オーストラリア政府が、風力発電や送電網といったエネルギーインフラの国内製造能力強化に向けた検討を開始しました。この動きは、世界的なサプライチェーンの再編とGX(グリーン・トランスフォーメーション)が交差する点にあり、日本の製造業にとっても重要な示唆を含んでいます。

オーストラリアで始まったエネルギーインフラの国内サプライチェーン強化

オーストラリア政府の産業・科学・資源省が、国内の鉄鋼メーカーや金属加工業者を対象に、風力発電および送電関連インフラのサプライチェーンへ、より深く関与する機会を探るための意見公募(コンサルテーション)を開始しました。これは、脱炭素化に不可欠な再生可能エネルギー関連のインフラ整備を、国内の産業振興と結びつけようとする明確な意図の表れと見て取れます。

これまで、こうした大規模なインフラプロジェクトでは、コスト最適化の観点からグローバルなサプライチェーンが活用されるのが一般的でした。しかし、近年の地政学リスクの高まりやコロナ禍での供給網の混乱を経て、各国はエネルギーや重要物資の安定供給を確保するため、サプライチェーンの国内回帰や強靭化へと舵を切り始めています。今回のオーストラリアの動きも、この大きな潮流の一環と捉えるべきでしょう。

GXが創出する、ものづくりの新たな需要

風力発電設備を例にとると、巨大なタワー(支柱)、ナセル(発電機や増速機を収める部分)、送電用の鉄塔など、その多くは高品質な鉄鋼製品と高度な金属加工技術の塊です。これらは、まさに日本の製造業が得意としてきた領域と重なります。求められるのは、単に材料を供給するだけでなく、厳しい環境下で数十年稼働するための耐久性、精密な設計に基づいた加工精度、そして安定した品質を保証する管理体制です。

GXの推進は、単なる環境規制の強化ではなく、こうした具体的な「ものづくり」の需要を新たに、そして大規模に創出するものです。エネルギーインフラという国の根幹を支える分野であるため、そこでは価格競争力だけでなく、信頼性や長期的な供給責任といった非価格競争力が極めて重要になります。これは、品質を強みとしてきた日本の製造現場にとって、その実力を発揮できる好機とも言えるでしょう。

グローバル市場における「地産地消」への備え

オーストラリアの事例は、他国でも同様の政策が展開される可能性を示唆しています。つまり、海外市場で事業を展開する日本の製造業にとって、今後は製品を輸出するだけでなく、現地のサプライチェーンにどう貢献するかという視点が不可欠になります。現地の製造拠点設立や、現地企業との技術提携、合弁事業の設立といった選択肢も、より現実的な経営課題として浮上してくる可能性があります。

これまでグローバルに最適化されてきたサプライチェーンが、各国・各地域の経済安全保障の観点から見直され、より「地産地消」に近いモデルへとシフトしていくかもしれません。この変化を的確に捉え、自社の技術力や生産ノウハウをどのように展開していくか、戦略的な検討が求められています。

日本の製造業への示唆

今回のオーストラリアの動向から、日本の製造業が読み取るべき要点は以下の通りです。

1. サプライチェーンにおける国内生産の価値再評価
経済効率性一辺倒の時代は終わりつつあります。特に国家の基盤となる重要インフラにおいて、国内に生産・技術基盤を維持することの戦略的価値が高まっています。自社の国内工場の役割や技術力を、経済安全保障という新たなものさしで再評価することが重要です。

2. GXを具体的な事業機会として捉える
脱炭素化は、新たなものづくりの需要を創出する大きな事業機会です。風力、太陽光、送電網、蓄電池など、GX関連分野において自社のコア技術(材料、加工、組立、品質管理など)がどのように貢献できるか、具体的な製品レベルで検討し、技術開発や設備投資の方向性を定める必要があります。

3. 海外市場における現地化戦略の重要性
海外のインフラ市場を狙う場合、単なる製品輸出だけでなく、現地の政策や産業振興の意図を汲み取り、現地での生産や現地企業との連携を視野に入れた戦略が求められます。技術力や品質管理ノウハウといった無形資産を、いかに現地で活用・展開するかが成功の鍵となるでしょう。

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