米国の建材大手Simpson Manufacturing社は、決算発表の場でクラウドベースの生産管理ソフトウェアの重要性を強調しました。単なる「モノ売り」から脱却し、顧客の生産プロセスそのものに価値を提供するこの動きは、日本の製造業にとっても事業モデル変革のヒントを与えてくれます。
製品からソリューションへ:建材メーカーが提供する生産管理ソフトウェア
米国の建築用コネクターや構造部材の大手であるSimpson Manufacturing社が、2024年第4四半期の決算発表において、自社が開発したクラウドソフトウェア「CS Producer」の重要性を改めて強調しました。このソフトウェアは、同社の主要顧客である建築用トラス(小屋組などの骨組み部材)の製造業者向けに提供される、生産管理システムです。
特筆すべきは、ハードウェアである建材を売る企業が、その顧客の工場運営を支援するソフトウェアを事業の柱の一つとして位置づけている点です。CS Producerは、トラスの製造における計画、資材管理、進捗管理、出荷までを一元的に管理することを目的としており、顧客の生産性向上に直接的に貢献します。これは、自社製品を売って終わりにするのではなく、製品が使われる川下の工程全体を最適化するソリューションを提供するという、明確な事業戦略の表れと言えるでしょう。
ソフトウェア提供がもたらす戦略的価値
Simpson社のような製造業が、顧客向けに業務ソフトウェアを提供する背景には、いくつかの戦略的な狙いがあると考えられます。
第一に、顧客との関係強化と囲い込み(ロックイン)です。顧客が自社のソフトウェアを日常業務で利用するようになれば、その業務プロセスはソフトウェアに最適化されていきます。結果として、顧客は競合他社の製品へ乗り換えにくくなり、継続的で安定した取引関係を築くことができます。
第二に、貴重なデータの獲得です。顧客がソフトウェア上でどのような部材を、いつ、どれくらいの量で生産計画に入れているかといったデータを把握できれば、需要予測の精度は格段に向上します。これにより、自社の生産計画や在庫管理を最適化できるだけでなく、顧客のニーズに基づいた新製品開発やサービス改善にも繋げることが可能になります。
そして第三に、事業モデルの転換です。製品の販売という一過性の収益だけでなく、ソフトウェアの利用料(サブスクリプション)という形で、継続的な収益(ストック型収益)を得る道が拓けます。これは、市場の変動に強い安定した経営基盤を構築する上で非常に重要です。
日本の製造業への示唆
このSimpson社の事例は、特定の業界に限った話ではありません。例えば、自動車部品メーカーが、その部品を組み付ける工場の生産ライン管理や品質検査を支援するツールを提供したり、産業機械メーカーが、機械の稼働データだけでなく、その機械を含む生産工程全体の最適化を図るソフトウェアを提供したりといった応用が考えられます。
自社の製品が、顧客のどのようなプロセスで、どのように使われているのか。そのプロセス全体を俯瞰し、非効率な点や課題を解決する手段としてデジタル技術やソフトウェアを提供できないか。この視点は、単なるコスト削減や品質向上といった内向きの改善活動だけでなく、顧客への新たな価値提供と、自社の事業競争力強化に繋がる重要な問いかけとなるでしょう。


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