米サンディア国立研究所の先進製造拠点「CAMINO」に学ぶ、AMと後加工の融合

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米国の国家安全保障を担うサンディア国立研究所が、先進製造技術を集約した新拠点「CAMINO」の能力を向上させていると発表しました。本稿では、アディティブ・マニュファクチャリング(AM)と伝統的な精密加工技術を組み合わせる同所の取り組みから、日本の製造業が学ぶべき点を解説します。

設計から製造、評価までを一貫して担う新拠点

米エネルギー省傘下のサンディア国立研究所は、国防やエネルギー安全保障に関する研究開発を担う、米国の技術開発の中核的な機関です。その研究所が、先進製造と革新的設計のためのセンター「CAMINO(Center for Advanced Manufacturing and Innovative Design)」の能力を強化していることを明らかにしました。この拠点の目的は、設計、シミュレーション、製造、そして評価という、ものづくりの一連のプロセスを一つの場所に集約し、迅速かつ効率的に複雑な部品を開発・製造することにあります。

日本の製造現場でも、開発部門と製造部門、品質保証部門の連携は常に課題となります。CAMINOは、物理的な距離をなくし、デジタルデータを基軸に各工程を連携させることで、部門間の壁を取り払い、開発リードタイムの劇的な短縮と品質の作り込みを目指していると考えられます。これは、単なる最新鋭の設備導入に留まらない、組織的なアプローチとして注目すべき点です。

アディティブ・マニュファクチャリング(AM)と放電加工(EDM)の組み合わせ

今回の発表で特に興味深いのは、アディティブ・マニュファクチャリング(AM、いわゆる3Dプリンティング)と、ワイヤー放電加工機(Wire EDM)を組み合わせた加工事例です。AMは、従来の切削加工では実現不可能な複雑な内部構造や、軽量化を実現するラティス構造など、革新的な設計を可能にする技術として期待されています。しかしその一方で、造形物の寸法精度や表面粗さが、従来の機械加工に及ばないという課題も抱えています。

サンディア研究所では、AMで造形した部品の基準面や嵌合部など、特に高い精度が要求される部分を、ワイヤー放電加工機で精密に仕上げています。AMの「自由な造形力」と、放電加工の「高い寸法精度」という、それぞれの技術の長所を組み合わせることで、最終製品としての価値を最大化するアプローチです。これは、AMを単独の技術として捉えるのではなく、既存の製造工程全体の中にどう組み込むか、という実務的な視点を示唆しています。

デジタルスレッドが実現する次世代のものづくり

CAMINOが目指すのは、設計データから製造、検査データまでをデジタル情報で一元管理する「デジタルスレッド」の構築です。設計段階の3Dモデルに基づき、シミュレーションで性能を予測し、AMで造形し、精密加工で仕上げ、三次元測定機などで品質を評価する。この一連の流れがデジタルデータで繋がり、フィードバックされることで、試作の回数を減らし、手戻りをなくし、品質を安定させることが可能になります。

特に、国家安全保障に関わるような少量多品種で極めて高い信頼性が求められる部品製造において、このような一貫したデジタルプロセスは不可欠です。造形条件や加工履歴、検査結果といった全てのデータが製品に紐づけられることで、完全なトレーサビリティも確保できます。これは、航空宇宙や医療機器など、高い品質保証が求められる日本の製造業にとっても、重要な指針となるでしょう。

日本の製造業への示唆

今回のサンディア国立研究所の取り組みは、日本の製造業に携わる我々にいくつかの重要な示唆を与えてくれます。

1. 新旧技術の戦略的組み合わせ
AMのような新しい技術を導入する際には、それ単体で完結させようとするのではなく、自社が長年培ってきた切削加工や研削加工、放電加工といった既存の技術と、いかに連携させ、補完し合う関係を築くかという視点が不可欠です。AMでしか作れない形状を作り、精度が必要な部分は得意な加工法で仕上げるという「適材適所」の考え方が、コストと品質を両立させる鍵となります。

2. 後工程を考慮した工程設計の重要性
AMで部品を造形する場合、後加工や検査がしやすいように、あらかじめ基準面や掴み代を設計に織り込んでおく必要があります。設計、AM、後加工の各担当者が、開発の初期段階から密に連携する体制を構築することが、手戻りのない効率的な生産プロセスを実現します。

3. デジタルを軸とした部門横断の推進
物理的に部門を集約することが難しい場合でも、3Dデータや各種の生産・検査データを共有し、一元管理する仕組みを構築することは可能です。まずは特定の製品やプロジェクトで、設計から製造、品質保証までをデジタルデータで繋ぐパイロット運用を試み、その効果と課題を検証していくことが、現実的な第一歩と言えるでしょう。

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