この記事の要点: 欧州連合(EU)は、輸入される鉄鋼製品の「溶解・鋳造国(melt and pour country)」を特定するための詳細な証明要件を定めた規則を公表しました。2026年10月1日から適用が開始され、輸入業者はミルシート(鋼材検査証明書)等を用いて、原料鋼材が最初に溶解・鋳造された国とヒートナンバー(溶鋼番号)を証明する必要があります。これにより、ステンレス鋼をはじめとする製造業のサプライチェーン管理とトレーサビリティ確保に新たな対応が求められます。
ニュースのポイント
- 2026年10月1日より、EUへの鉄鋼輸入時に溶解・鋳造国とヒートナンバーの証明が必須化
- 1年間の移行期間(2027年9月末まで)は、ミルシート以外の補足書類での証明も容認
- 2027年10月以降はミルシートが原則必須となり、将来的に関税割当枠の基準になる可能性
背景
EUは2026年8月31日、官報にて実施規則(EU)2026/1963を公表しました。これは、単に最終加工や圧延が行われた国ではなく、鉄鋼が最初に炉で液体状に溶解され、最初の固体(スラブ、ビレット、インゴット等)に鋳造された場所を特定するものです。アジア圏で一般的な、ある国で溶解した原料を別の国で冷間圧延などの二次加工を施してEUへ輸出するような、複雑なクロスボーダーのサプライチェーンを可視化・規制する狙いがあります。
何が起きたのか
新規則の適用により、EUの輸入業者は原則として溶解・鋳造国とヒートナンバーが記載されたミルシート(MTC)を提示しなければなりません。2026年10月1日から2027年9月30日までの1年間は移行期間として、ミルシートがない場合でも、インボイス、納品書、品質証明書、製造・コスト関連文書などの代替書類で証明することが認められます。しかし、2027年10月1日以降はミルシートが必須となり、代替書類は不足情報の補足としてのみ認められるようになります。適切な証明ができない場合、通関の遅延や輸入拒否のリスクが生じます。
製造業・生産管理への見方
自社で製鋼から圧延まで一貫して行う大手メーカーにとっては、ヒートナンバーや製造記録が既存の生産管理システム内で統合されているため、対応は比較的容易です。しかし、複数の流通業者や加工センターを経由するサプライチェーンや、他国から調達した熱延鋼板を冷間圧延・スリット加工してEUへ輸出する加工メーカーにとっては、トレーサビリティの維持が極めて困難になります。仕入先からのミルシート回収、ヒートナンバーと製品の紐付け管理、在庫管理システムの改修など、生産管理・調達プロセスの見直しが必要となります。
現場で確認したいポイント
- EU向け輸出製品の原材料が、どこで溶解・鋳造されたものか遡及して特定できるか
- 仕入先からヒートナンバーが記載されたミルシートを確実に、遅滞なく入手できる体制があるか
- 自社の生産管理・在庫システムで、製品と原料のヒートナンバーの紐付けが維持されているか
確認しておきたい点
本規則の導入初期は通関手続きの煩雑化やコスト増が主ですが、2027年10月以降は国別の関税割当(TRQ)の配分にこのデータが加味され、2028年6月には割当アクセス自体の基準になるかが評価されます。将来的な関税影響を注視する必要があります。
出典情報
| 出典 | news.metal.com |
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| 公開日時 | 2026-08-31T12:18:47Z |
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