この記事の要点: 株式会社日立ハイテクは、株式会社パウレックと共同で、全固体電池の製造プロセスにおける正極活物質へのコーティング条件最適化に向けた実証を完了した。本実証では、パウレックの粉体処理技術や装置データと、日立ハイテクの解析技術およびAI・インフォマティクス技術を融合したフィジカルAIを活用。従来は熟練技術者の経験や試行錯誤に依存していた高度なコーティング条件の探索を、データに基づいて効率化する仕組みを構築した。
発表内容のポイント
- 煩雑な前処理が不要な分析装置を活用し、膜厚や被覆均一性を定量評価する手法を開発
- 装置の運転データと評価結果を統合し、プロセス・インフォマティクスで条件を最適化
- 「HMAX Industry」のラインアップとして事業化し、全固体電池の量産立ち上げを支援
発表の背景
全固体電池は安全性やエネルギー密度の高さから次世代電池として期待されているが、充放電の繰り返しによる正極活物質と固体電解質の界面での抵抗体発生が課題となっている。これを防ぐため正極活物質への酸化物被膜コーティングが行われるが、均一な被覆や膜厚の制御には材料組成や装置条件など多くの要素が絡む。これまでは高度な専門知識を持つ熟練者の経験やノウハウに依存しており、条件探索やスケールアップに多大な時間と工数がかかっていた。
何が発表されたのか
本実証では2つのアプローチで課題解決を図った。まず、パウレックの流動層コーティング装置で製造したサンプルに対し、日立ハイテクの蛍光X線分析装置(XRF)や走査電子顕微鏡(SEM)を用いて、煩雑な前処理を省いた簡便な定量評価手法を開発。評価時間を短縮し、プロセス条件と電池性能の因果関係を明確にした。次に、この評価結果と装置の運転データを統合し、日立のデジタルソリューション群「PROACCELA」のプロセス・インフォマティクス技術を適用。AI解析により、高品質で再現性の高い最適なコーティング条件を導き出すことに成功した。
製造業・生産管理への見方
製造業の生産技術やプロセス設計において、熟練者の「勘と経験」に頼るプロセスのデジタル化(DX)は急務である。特に全固体電池のような先端分野では、研究開発(Lab)から量産(Fab)への移行時にスケールアップの壁が存在する。今回の実証は、装置から得られる物理データと高度なAI解析を組み合わせる「フィジカルAI」により、実験回数を削減し、量産立ち上げ期間を大幅に短縮できる可能性を示している。プロセス・インフォマティクスの有効な活用事例として、電池製造のみならず、粉体プロセスを伴う化学や材料分野の生産管理・技術者にとっても注目すべき取り組みである。
現場で確認したいポイント
- 自社の粉体プロセスやコーティング工程において、熟練者のノウハウ依存度を把握できているか
- 実験データや装置の運転データが、AI解析に活用できる形でデジタル化・統合されているか
- 開発から量産へのスケールアップ(Lab to Fab)において、評価や条件出しに要する期間がボトルネックになっていないか
確認しておきたい点
本技術は実証が完了した段階であり、実際の事業化や「HMAX Industry」としての具体的なサービス提供時期、および対応可能な材料系の詳細については今後の展開を確認する必要がある。
関連リンク
- 関連ページ:日立ハイテクのニュースリリース詳細ページ
- 発表企業サイト:株式会社日立ハイテクの公式ウェブサイト
- 発表企業のPR TIMESページ
出典情報
| 出典 | PR TIMES |
|---|---|
| 発表企業 | 株式会社日立ハイテク |
| 発表日時 | 2026-08-20 13:17:07 |
| 元記事 | PR TIMESで読む |