JPモルガンが発表した最新の調査によると、2025年末の世界の製造業は緩やかな成長で一年を締めくくりました。生産量はわずかに増加したものの、先行指標である新規受注は伸び悩み、世界的な需要の力強さに欠ける状況が示唆されています。
年末時点での世界製造業の概況
JPモルガンとS&Pグローバルが定期的に発表している世界の製造業景況感指数によると、2025年末の製造業セクターは、 subdued footing(落ち着いた足取り)で着地したと報告されています。これは、急激な成長や後退ではなく、全体として横ばいに近い緩やかな成長状態にあることを意味します。具体的には、生産活動そのものは微増を維持しましたが、将来の生産動向を占う上で重要な「新規受注」の項目が伸び悩んでおり、一部では減少も見られました。この生産と受注の間の小さな乖離は、今後の動向を慎重に見極める必要があることを示しています。
生産と新規受注の乖離が示すもの
製造業の実務に携わる我々にとって、「生産は維持しているが、新規受注が増えていない」という状況は、いくつかの可能性を示唆するため注意が必要です。一つは、これまで抱えていた受注残(バックオーダー)を消化することで生産量を維持している可能性です。この場合、新たな受注が回復しなければ、いずれ生産活動は縮小せざるを得ません。もう一つは、見込み生産によって在庫が積み上がっている可能性です。需要が回復しないまま在庫が増え続ければ、将来的な生産調整や価格下落のリスクを高めることになります。いずれにせよ、需要が生産を牽引する健全な成長サイクルとは言えない状況であり、多くの企業が先行きの不透明感から慎重な生産計画を立てていることの表れとも考えられます。
日本の現場における視点
世界全体の動向は、グローバルに部品を供給したり、製品を輸出したりしている日本の製造業にとって他人事ではありません。特に、主要な輸出先である欧米やアジア市場の需要動向は、自社の生産計画に直結します。今回の報告は、世界的に見て「勢いのある需要」が期待しにくい状況であることを示唆しています。国内に目を向ければ、円安による原材料・エネルギーコストの高止まりや人手不足といった構造的な課題も抱えています。このような外部環境下では、これまで以上に精度の高い需要予測と、それに基づいた柔軟な生産・在庫管理体制の構築が求められます。いたずらに生産量を追うのではなく、キャッシュフローを重視した経営判断が重要性を増していると言えるでしょう。
日本の製造業への示唆
今回の調査結果から、日本の製造業が留意すべき実務的な示唆を以下に整理します。
1. 需要動向の慎重な見極め:
世界的な新規受注の伸び悩みは、需要の停滞を示唆しています。自社の受注状況や顧客からの内示情報を注意深く分析し、楽観的な生産計画を避けることが肝要です。営業部門との連携を密にし、市場の生の情報を迅速に生産計画へ反映させる仕組みを再確認すべきでしょう。
2. 在庫管理の徹底とキャッシュフロー重視:
需要が不透明な時期には、過剰在庫は経営を圧迫する大きなリスクとなります。原材料の調達から製品在庫に至るまで、サプライチェーン全体の在庫レベルを最適化する取り組みが求められます。適正在庫を維持し、キャッシュフローを健全に保つことが、不測の事態への備えとなります。
3. 生産現場の足腰を強化する:
外部環境が厳しい時こそ、内部の改善活動が競争力を左右します。コスト削減に繋がる生産性向上、品質の安定化、多品種少量生産への対応力強化など、現場でできる改善を着実に進めることが重要です。需要変動に柔軟に対応できるしなやかな生産体制を構築することが、企業の持続的な成長を支えます。


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