中国製造業PMI、12月は明暗分かれる – 輸出向け中小企業に回復の兆し

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2023年12月の中国の製造業景況感を示す主要な経済指標が発表され、調査機関によって拡大と縮小という異なる結果が示されました。この「まだら模様」の状況は、中国サプライチェーンの現状を多角的に読み解く必要性を示唆しています。

二つの指標が示す中国製造業の異なる姿

2023年12月の中国の製造業の動向を示す購買担当者景気指数(PMI)において、二つの主要な調査が対照的な結果を示しました。一つは民間調査機関である財新(Caixin)が発表したもので、11月の50.7から50.8へとわずかに上昇し、景況の拡大・縮小の節目である50を上回りました。これは、8ヶ月ぶりに活動が拡大に転じたことを意味します。

一方で、中国国家統計局(NBS)が発表した公式PMIは、11月の49.4から49.0へと低下し、3ヶ月連続で50を下回りました。こちらは、製造業活動が依然として縮小局面にあることを示しています。

この違いは、それぞれの調査対象の特性に起因すると考えられます。財新PMIは主に沿岸部に集中する輸出志向の中小民間企業を対象としているのに対し、公式PMIは大規模な国有企業をより多く含んでいます。したがって、12月の状況は「輸出関連の中小企業には休日シーズンを前にした受注増などから回復の兆しが見える一方、国内需要に依存する大規模企業は依然として厳しい状況にある」という二面的な姿を浮き彫りにしたと言えるでしょう。

回復の背景にある一時的要因と構造的課題

財新PMIの改善は、主に旧正月などの休日を前にした受注の回復が背景にあるとみられています。これは、短期的な需要の盛り上がりである可能性も否定できず、この回復基調が持続するかどうかは慎重に見極める必要があります。特に、毎年見られる季節的な変動要因を差し引いて考えることが重要です。

他方で、公式PMIが示す不振は、中国経済が直面しているより根深い課題を反映している可能性があります。国内の不動産市場の長期的な不況や、それに伴う消費者心理の冷え込みは、内需全体の重しとなっています。政府による景気刺激策が講じられてはいるものの、その効果が製造業全体、特に国内向けの分野にまで波及するには、まだ時間を要する状況なのかもしれません。

サプライチェーンへの影響と実務的な視点

日本の製造業にとって、この状況はサプライチェーンの取引先を評価する上で重要な示唆を与えます。中国の特定の中小サプライヤーからの調達に依存している場合、短期的には生産活動の回復によって納期や供給が安定する可能性があります。しかし、その回復が一時的なものであるリスクも考慮し、継続的なコミュニケーションと状況のモニタリングが不可欠です。

逆に、中国の国内市場を最終製品の販売先と位置づけている企業にとっては、公式PMIが示す内需の弱さは引き続き懸念材料となります。大規模なインフラ投資や国有企業の設備投資に連動するビジネスにおいては、需要の本格的な回復を見通すのはまだ難しい局面かもしれません。自社のサプライチェーンや販売網において、取引先がどちらのセクター(輸出向け中小企業か、国内向け大企業か)に属するのかを改めて把握し、それぞれのリスクと機会を評価することが求められます。

日本の製造業への示唆

今回の中国製造業PMIが示す状況から、日本の製造業の実務担当者として以下の点を考慮すべきでしょう。

1. 指標の多角的な解釈の重要性
中国の経済指標を一つの数値だけで判断するのは危険です。公式PMIと財新PMIのように、異なる側面を映し出す指標を併せて確認し、その背景にある調査対象の違いを理解することで、より解像度の高い現状把握が可能になります。

2. 回復の持続性に対する慎重な見極め
休日前の受注増といった短期的な要因による押し上げ効果と、不動産不況などの構造的な課題を分けて考える必要があります。今回の回復の兆しを楽観視しすぎず、中国経済全体のファンダメンタルズを継続的に注視することが肝要です。

3. サプライヤーの状況把握とリスク評価の深化
自社のサプライチェーンを構成する中国企業の特性(規模、国有/民間、輸出/国内向けなど)を再評価する良い機会です。取引先の状況が二極化している可能性を念頭に置き、よりきめ細やかなサプライヤー管理やリスク評価を行うことが望まれます。

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