東南アジアの製造拠点、マレーシアから興味深い求人情報が公開されました。エレクトロニクス製造の中核であるPCBA(プリント基板実装)の生産管理者の募集ですが、その必須要件から、グローバルサプライチェーンにおけるコミュニケーションの現実的な課題と対応策が見えてきます。
マレーシアで求められる「中国語必須」の生産管理者
最近、マレーシアのパシール・グダンにある新エネルギー関連企業「DEYE NEW ENERGY TECHNOLOGY MALAYSIA」が、PCBAの生産管理者を募集しました。PCBAは、あらゆる電子機器に搭載されるプリント基板に電子部品を実装したもので、製品の品質と性能を左右する心臓部ともいえる重要部品です。この求人情報で特に注目すべきは、応募の必須要件として「中国語(Mandarin)が堪能であること」が明記されている点です。
なぜ生産管理の現場で「中国語」が求められるのか
求人情報には、その理由として「中国語を話す顧客と効果的にコミュニケーションをとるため」と記載されています。これは、製造現場の管理者が、単に工場内の生産活動を管理するだけでなく、顧客との直接的な対話を求められていることを示しています。技術仕様のすり合わせ、品質問題発生時の原因究明と対策報告、納期の調整など、生産管理者が顧客と緊密に連携する場面は少なくありません。この企業の主要な顧客が、中国語圏の企業であることが強く推察されます。
しかし、理由はそれだけにとどまらないと考えられます。まず、このDEYE社自身が中国系企業であり、中国本社との報告や技術部門との連携において、中国語が公用語となっている可能性は高いでしょう。さらに、PCBA製造に不可欠な電子部品の多くは、中国のサプライヤーから調達されていることが一般的です。したがって、部品の納期管理や品質に関する問い合わせなど、サプライヤーとの日常的なコミュニケーションにおいても、中国語が実務上、最も効率的で確実な言語であると考えられます。顧客、本社、サプライヤーというサプライチェーンの主要な関係者との円滑な意思疎通のために、中国語能力が必須スキルとされているのです。
日本の製造業への示唆
この一件は、海外拠点を運営する日本の製造業にとっても、重要な示唆を与えてくれます。
1. グローバル人材に求められる言語能力の多様化
従来、海外とのコミュニケーションでは英語が第一言語とされてきました。しかし、サプライチェーンが特定の国や地域に深く根差している場合、英語だけでは不十分な場面が増えています。特に、中国系企業がサプライチェーンの上流から下流まで大きな影響力を持つ現在、実務レベルでの中国語の重要性は看過できません。これは、管理者層だけでなく、購買や品質保証、技術担当者にも当てはまる可能性があります。
2. 海外拠点の管理者選定における視点
海外工場の責任者や管理者を選定する際、生産管理技術やマネジメント能力はもちろん重要ですが、それに加えて「サプライチェーン上の主要な関係者と円滑に意思疎通できる言語能力」を評価軸に加えることが、拠点の安定運営につながります。日本人駐在員を派遣する場合も、現地の主要言語を習得する努力が、現地スタッフや取引先との信頼関係構築に大きく寄与するでしょう。
3. サプライチェーンにおける「言語リスク」の認識
自社のサプライチェーンにおいて、主要な取引先がどの言語でコミュニケーションをとっているかを把握することは、隠れたリスクを管理する上で重要です。言葉の壁は、誤解や情報伝達の遅れを生み、ひいては品質問題や納期遅延につながりかねません。サプライヤー監査などの際に、コミュニケーションの手段や言語について確認しておくことも有効な対策の一つです。
今回の求人情報は、グローバルな生産活動の現場では、技術や管理手法と同じく、言語というコミュニケーションツールがいかに重要な役割を果たしているかを改めて浮き彫りにしています。自社の海外展開や人材育成を考える上で、参考にすべき点が多い事例と言えるでしょう。


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