半導体製造におけるロボットティーチング工数を90%削減 ― 韓国DAINCUBE社が統合制御ソリューションを発表

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韓国のFAソリューション企業であるDAINCUBE社が、半導体製造におけるロボット制御の革新的なソリューションを発表しました。デジタルツイン技術を活用し、複数メーカーのロボットを統合制御することで、ティーチング工数を大幅に削減し、スマートファクトリー化を加速させるものとして注目されます。

半導体製造現場におけるロボット制御の課題

最先端の半導体製造工場では、ウェハー搬送などを担う多数のロボットが稼働しており、その自動化レベルは極めて高い水準にあります。特に、製造装置へのウェハー供給を担うEFEM(Equipment Front End Module)は、生産性を左右する重要な要素です。しかし、現場では異なるメーカーのロボットや制御装置が混在していることが多く、それぞれの機器に対して個別のティーチング(動作教示)やプログラミングが必要となり、多大な時間と専門知識が要求されるという課題がありました。新規ラインの立ち上げやレイアウト変更、メンテナンスのたびに発生するこの工数は、生産効率向上の大きな足かせとなっていました。

複数メーカーのロボットを統合する制御プラットフォーム

この課題に対し、韓国のDAINCUBE社が発表したのが、統合ロボット制御ソリューションです。このソリューションの最大の特徴は、特定メーカーに依存しないオープンプラットフォームである点です。これまで個別のコントローラーで制御する必要があった複数メーカー製のロボットを、単一のソフトウェア環境下で一元的に管理・操作することを可能にします。これにより、機器ごとの操作方法の違いに起因する非効率性を排除し、オペレーターの学習コストを低減することができます。

デジタルツイン活用によるティーチング工数90%削減

今回の発表で特に注目されるのが、ティーチング工数を最大90%削減したという点です。これを実現しているのが、デジタルツイン技術の活用です。物理的な工場設備やロボットと全く同じ状態を仮想空間上に再現し、その中でロボットの動作プログラム作成やシミュレーションを事前に行うことができます。このオフラインでの事前検証により、実際の生産ラインを停止させることなく、最適な動作経路の策定や干渉チェックを完了させることが可能です。従来、現場のロボットを実際に動かしながら行っていたトライ&エラーのプロセスを大幅に短縮できるため、ラインの立ち上げ期間の短縮や生産機会損失の最小化に直接的に貢献します。

スマートファクトリー実現に向けたデータ活用

このソリューションは、単なるティーチングツールにとどまりません。ロボットの動作状況をリアルタイムで監視・分析する機能も備えており、収集したデータを活用することで、予知保全やさらなる生産プロセスの最適化につなげることができます。例えば、各ロボットの稼働データやサイクルタイムを詳細に分析し、ボトルネックとなっている工程を特定するといった活用が考えられます。これは、データ駆動型の工場運営、すなわちスマートファクトリーの実現に向けた重要な基盤技術と言えるでしょう。

日本の製造業への示唆

今回のDAINCUBE社の取り組みは、日本の製造業、特に自動化が進んだ工場にとって多くの示唆を含んでいます。

第一に、「マルチベンダー環境の克服」です。日本の多くの工場でも、様々な年代、様々なメーカーの設備が混在しています。特定ベンダーに縛られない統合制御プラットフォームは、既存資産を活かしながら段階的にスマート化を進める上で、有効な選択肢となり得ます。

第二に、「デジタルツインの具体的な活用法」です。「ティーチング工数の削減」という、現場が直面する具体的な課題解決にデジタルツイン技術を適用した好例と言えます。自社の工場において、どの工程の、どのような作業を仮想空間で代替すれば最も効果的かを検討する際の参考になるでしょう。

第三に、「生産ラインを止めない改善活動の重要性」です。多品種少量生産が主流となる中、段取り替えや設備調整のために生産ラインを止める時間は極力短縮したいところです。オフラインでのプログラミングやシミュレーションは、この課題に対する直接的な解決策であり、今後の工場運営においてますます重要性が高まるアプローチです。

最後に、「熟練技能への依存からの脱却」です。これまで熟練技術者の経験と勘に頼ることが多かったロボットのティーチング作業を、直感的なGUIとシミュレーションによって標準化・効率化できる可能性を示しています。これは、技術継承や人材育成に課題を抱える多くの企業にとって、検討に値する方向性ではないでしょうか。

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