製造プロセスにおいて、主たる製品と同時に生み出される「副産物」。これらを単なる廃棄物として扱うのではなく、資産として適切に管理することが、原価計算の精度向上と新たな収益機会の創出に繋がります。本稿では、ERPシステムなどを活用した副産物管理の実務的な考え方について解説します。
副産物(By-Product)とは何か
製造業の現場では、ある製品(主産物)を生産する過程で、意図せずとも別の生産物が生まれることがあります。このうち、比較的価値が低く、主産物の製造が目的である場合に発生するものを「副産物(By-Product)」と呼びます。例えば、製材工場における「おがくず」、食肉加工における「骨や皮」、化学プロセスにおける特定の「副生成物」などがこれにあたります。
これらは、従来は廃棄物として処理コストをかけて処分されていたケースも少なくありません。しかし、おがくずが燃料や建材の原料になったり、骨や皮がスープの出汁やゼラチンの原料になったりと、売却価値を持つ場合があります。こうした有価物を会計上・生産管理上、適切に扱うことが重要になります。
なぜ、副産物の管理が重要なのか
副産物の管理を徹底することには、大きく分けて二つの実務的なメリットがあります。
一つ目は、「正確な原価計算の実現」です。副産物に売却価値がある場合、その価値(評価額)を主産物の製造原価から差し引く(控除する)のが、原価計算における一般的な考え方です。これにより、主産物の真の製造原価をより正確に把握でき、適正な販売価格の設定や、製品ごとの収益性分析の精度向上に繋がります。副産物の価値を原価に反映させないと、主産物の原価を過大に計上してしまうことになります。
二つ目は、「収益機会の創出とコスト削減」です。副産物を有価物として販売することで、新たなキャッシュフローを生み出すことができます。また、これまで廃棄物として処理していた場合には、その処理コストを削減できるという直接的なメリットもあります。これは、昨今注目されるサーキュラーエコノミー(循環型経済)の観点からも、企業価値を高める取り組みと言えるでしょう。
ERPシステムを活用した副産物管理
副産物を継続的かつ正確に管理するためには、Excelなどによる手作業では限界があり、生産管理システムやERPの活用が効果的です。多くのERPシステムでは、副産物を管理するための標準機能が備わっています。
一般的には、部品表(BOM: Bills of Materials)において、副産物を「マイナスの員数(所要量)を持つ品目」として登録します。例えば、主産物Aを1個生産すると、副産物Bが0.5kg発生する場合、BOM上ではBの員数を「-0.5」と設定します。こうすることで、生産実績を計上した際に、システムは主産物Aの在庫が増えると同時に、副産物Bの在庫も自動的に計上します。
このとき、副産物Bにあらかじめ標準原価や評価額(例えば、想定売却価格)を設定しておくことで、生産完了と同時に製造原価からの控除額が自動計算されます。これにより、経理部門と製造現場のデータがリアルタイムに連携され、月次決算の早期化にも貢献します。手作業による煩雑な計算や計上漏れを防ぎ、管理業務を大幅に効率化できるのです。
日本の製造業への示唆
これまで見てきたように、副産物の管理は単なる会計処理の問題ではなく、製造原価の見える化、収益改善、そして資源の有効活用に直結する重要なテーマです。日本の製造業がこのテーマに取り組む上での要点と実務的なヒントを以下に整理します。
要点:
- 意識の転換: まずは自社の製造工程で発生しているものを棚卸し、「廃棄物」ではなく「有価物」として捉え直す視点が不可欠です。現場の気付きが新たな価値創造の第一歩となります。
- 正確な原価把握: どんぶり勘定的になりがちな原価管理から脱却し、副産物の価値を適切に反映させることで、製品別の真の収益性を把握することが、的確な経営判断の基礎となります。
- 仕組み化の重要性: 属人的な管理ではなく、ERPなどのシステムを用いて、BOMへの登録から在庫計上、原価計算への反映までを自動化する仕組みを構築することが、継続的な運用の鍵となります。
実務への示唆:
- 現場の再点検: 工場長や現場リーダーは、自工程で発生するスクラップや端材、副生成物などをリストアップし、それらが市場で価値を持つ可能性はないか、購買部門や営業部門と連携して調査することから始めましょう。
- 部門横断のルール作り: 副産物の評価方法(売却見積額を用いるか、別の基準か)や、原価計算への反映プロセスについて、製造、経理、情報システム部門が連携して社内ルールを明確にすることが求められます。
- システム機能の確認: 現在使用している生産管理システムやERPに、副産物を管理する機能(マイナス員数のBOM設定など)があるかを確認し、もし未使用であればその活用を検討すべきです。将来的なシステム更新の際には、必須要件として盛り込むことが望ましいでしょう。


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