インドの大学事例に学ぶ、専門技術者のための経営人材育成のあり方

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インドの大学で、畜産専門家向けの高度な経営開発プログラムが開催されたという報道がありました。一見、日本の製造業とは無関係に思えるこの取り組みは、技術者が経営を担うことの多い我々の業界にとって、次世代リーダー育成の重要性を再認識させる示唆に富んでいます。

異分野から学ぶ人材育成の視点

先日、インドのルディアナにある獣医・動物科学大学にて、畜産生産管理の専門家を対象とした高度経営開発プログラム(Advanced MDP)が開催されたとの報がありました。これは、畜産という専門分野のプロフェッショナルに対して、経営管理能力の向上を目的とした体系的な教育を行う取り組みです。

畜産業と製造業では、扱う対象は大きく異なります。しかし、その根底にある「高度な専門知識を持つ人材に、組織を率いるための経営・管理能力をいかにして付与するか」という課題は、我々日本の製造業にとっても極めて重要なテーマと言えるでしょう。むしろ、技術力が競争力の源泉であるからこそ、技術と経営を結びつけられる人材の育成は、企業の持続的成長に不可欠な要素です。

技術と経営の「壁」を越えるために

日本の製造現場では、優れた技術者やエンジニアが、その実績を評価されて工場長や部門長といった管理職に昇進するキャリアパスが一般的です。しかし、そこで多くの人が「優れた専門家」から「優れた管理者」への役割転換に苦慮するという現実があります。求められるスキルセットが、技術の深化や個別問題の解決から、ヒト・モノ・カネ・情報といった経営資源全体の最適化へと大きくシフトするためです。

このインドの大学での取り組みは、まさにこの「技術と経営の壁」を乗り越えるためのものです。専門家が日々の業務で培った知見に、財務、人事、マーケティング、サプライチェーン・マネジメントといった経営の共通言語を体系的に組み合わせることで、より広い視野で事業を俯瞰し、戦略的な意思決定ができるリーダーを育成することを目的としています。

OJTの強みと体系的教育の必要性

OJT(On-the-Job Training)による実践的な指導は、日本の製造業の強みであり、現場力を支える重要な育成手法です。しかし、上位の管理職や経営層を目指す人材にとっては、OJTで得られる断片的な知識や経験だけでは不十分な場合があります。特に、自部門以外の機能や全社的な経営課題に対する理解を深めるには、業務を離れて学ぶ体系的な機会が非常に有効です。このようなOff-JTは、日々の業務から一旦距離を置くことで、自身の役割や事業全体を客観的に見つめ直す良い機会にもなります。

今回のインドの大学の事例は、産業界が必要とする人材像を大学という教育機関が的確に捉え、専門性の高い育成プログラムを提供している好例と言えるでしょう。産学連携による人材育成の一つのモデルケースとして、我々も参考にすべき点が多いのではないでしょうか。

日本の製造業への示唆

今回のニュースから、日本の製造業が改めて留意すべき点を以下に整理します。

1. 専門人材への計画的な経営教育
優れた技術者が、自動的に優れた管理者になるわけではありません。技術系の管理職候補者に対しては、現場経験だけでなく、経営に関する知識を体系的に学ぶ機会を計画的に提供することが重要です。昇進してから慌てて学ばせるのではなく、早期から経営視点を養うための教育投資を検討すべきでしょう。

2. 異業種・異分野からの学習
自社の業界の常識や成功体験に固執せず、他業種や海外の取り組みにも積極的に目を向ける姿勢が求められます。今回のような一見無関係に見える分野の事例からも、自社の課題解決に繋がる普遍的なヒントを見出すことができます。

3. 次世代リーダー育成プログラムの体系化
個々の管理者の経験や指導力に依存した属人的なOJTだけでなく、企業の将来を担う人材を育成するための明確なプログラム(MDP: Management Development Program)を設計・導入することが不可欠です。どのような役職に、どのような能力が必要かを定義し、それに基づいた育成計画を整備することが、組織全体の能力向上に繋がります。

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