大手メディア企業Fremantle社が、Netflixで制作管理の要職にあった人物を米国制作部門のトップに迎えたというニュースが報じられました。一見、製造業とは無関係に見えるこの人事ですが、実はこれからの生産管理や人材戦略を考える上で、重要な示唆を含んでいます。
エンタメ業界で起きた、示唆に富む人材獲得
先日、欧州を拠点とする世界有数のメディア企業Fremantle社が、米国制作部門の新たな責任者としてジャマル・ロビンソン氏を任命したと発表しました。注目すべきは、ロビンソン氏が動画配信サービスの巨人であるNetflixで、米国・カナダ地域の制作管理担当VPを務めていたという経歴です。これは、伝統的なメディア企業が、デジタルネイティブ企業の先進的なノウハウを取り込もうとする明確な意志の表れと見て取れます。
映像制作における「Production」と製造業の「生産管理」
記事にある「Production」は、日本語では「制作」と訳されますが、その本質は製造業における「生産管理」と多くの共通点を持っています。予算、スケジュール、品質を管理し、多くの専門家や外部スタジオ(我々の言葉で言えばサプライヤー)を束ね、最終的な製品(映像コンテンツ)を世に送り出す。まさに、QCD(品質・コスト・納期)を追求するモノづくりの現場と同じ構造です。
特にNetflixは、データ分析を駆使した需要予測や、グローバルで標準化された効率的な制作プロセスを構築し、コンテンツという無形資産を驚異的なスピードと量で生産する仕組みを作り上げました。これは、従来の勘や経験に頼りがちだった映像業界に、製造業的な合理性とデータサイエンスを持ち込んだ革新と言えるでしょう。こうした企業の出身者が持つ知見やマネジメント手法は、業界の垣根を越えて価値を持つ時代になっています。
異業種の知見が自社の変革を促す
今回の人事は、特定の業界で磨き上げられた高度な生産管理ノウハウが、他業界においても競争優位の源泉となり得ることを示しています。かつて、トヨタ生産方式(TPS)が自動車業界を超えて多くの製造業、さらにはサービス業にまで影響を与えたように、現代ではNetflixのようなデジタル企業のプロセス管理手法が、新たな「標準」として注目されているのです。
日本の製造業においても、これまで自社や同業他社の中で培ってきた常識や手法だけでは、変化の激しい市場環境に対応しきれない場面が増えています。例えば、IT業界で生まれたアジャイル開発の手法を製品開発プロセスに応用したり、EC業界の高度な需要予測・在庫管理の仕組みをサプライチェーン改革に活かしたりと、異業種から学ぶべきことは数多く存在します。
日本の製造業への示唆
今回のニュースから、我々日本の製造業に携わる者が得るべき実務的な示唆を以下に整理します。
1. 人材獲得戦略の多様化
自社の変革に必要なスキルや知見は、必ずしも業界内部に存在するとは限りません。デジタル技術の活用や新たな生産方式の導入を検討する際には、IT、データサイエンス、物流など、異業種で実績を上げた人材をキーパーソンとして招聘することも有効な選択肢となります。固定観念を捨て、外部の血を入れる勇気が、組織の硬直化を防ぎます。
2. 「生産管理」の知識体系のアップデート
長年培ってきた生産管理の手法は貴重な財産ですが、それに安住していてはなりません。Netflixの例のように、データとデジタル技術を前提とした新しい時代の生産管理・サプライチェーン管理の手法が次々と生まれています。他業界の成功事例を積極的に研究し、自社のプロセスに取り入れられないかを常に問い続ける姿勢が求められます。
3. 業務プロセスの本質的な理解
なぜNetflixの制作管理ノウハウが他社で通用するのか。それは、彼らが個別の事象ではなく、普遍的な課題解決の「型」や「仕組み」を構築しているからです。我々も日々の業務をこなすだけでなく、その背景にある原理原則や本質を理解し、体系化・標準化することで、それは他部署や他拠点、ひいては他社でも通用する普遍的な強みとなり得ます。


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