米テキサス州で、高校生が大学レベルの単位を取得しながら学ぶプログラムの学生が、先進製造技術の競技会で優秀な成績を収めました。この事例は、単一技能の習熟だけでなく、複数の技術を統合して課題を解決する能力の重要性を示しており、日本の製造業における人材育成を考える上で示唆に富むものです。
米国の先進製造技術競技会「Project MFG」
先日、米国のサウステキサス大学(STC)のニュースとして、同大学のプログラムに在籍する学生が「Project MFG」という先進製造技術の競技会で優秀な成績を収めたことが報じられました。この「Project MFG」は、単一の技能を競うものではなく、CNC加工、溶接、プログラミング、3Dプリンティングといった複数の専門スキルを統合し、与えられた課題を解決する能力を競うものです。これは、現代の製造現場で求められる、複合的な問題解決能力を評価する新しい形の競技会と言えるでしょう。
高校からの高度専門教育「デュアルクレジット・プログラム」
今回注目すべきは、この学生が高校在学中に大学の単位も取得できる「デュアルクレジット・プログラム」の出身である点です。これは、早い段階から意欲のある若者に高度な専門教育の機会を提供し、実践的なスキルを身につけさせる仕組みです。日本の工業高校や高等専門学校(高専)における専門教育に近いものがありますが、より大学教育との連携を密にしている点が特徴的です。若いうちから高度な設備に触れ、体系的な知識を学ぶ機会が、優れた技術者の育成に繋がっていることが伺えます。
日本の現場に求められる「統合力」
この競技会が重視しているのは、個々の加工技術の精度やプログラミングの巧みさだけではありません。むしろ、それらの技術をいかに組み合わせて、一つの製品やシステムを完成させるかという「統合力」や「プロジェクトマネジメント能力」が問われています。これは、工場のスマートファクトリー化やDXが進む日本の製造現場においても、ますます重要視されるスキルセットです。設計、加工、組立、検査といった各工程がデジタルで連携する現代の工場では、一部の工程に精通しているだけでなく、プロセス全体を俯瞰し、異なる技術分野の知識を繋ぎ合わせて問題を解決できる人材が不可欠となります。従来の多能工の考え方を、デジタル技術も含めてさらに発展させた能力と言えるかもしれません。
日本の製造業への示唆
今回の米国の事例は、私たち日本の製造業にとってもいくつかの重要な示唆を与えてくれます。
1. 次世代の技能評価と育成目標の再考
従来の技能五輪のように単一技能を極めることの価値は揺るぎませんが、それに加えて、複数の技術を統合して課題を解決する能力を評価し、育成する仕組みを検討する時期に来ているのかもしれません。社内での技能コンテストや研修プログラムに、部門横断的なプロジェクト課題を取り入れることも有効な一手でしょう。
2. 産学連携による早期教育の深化
日本の工業高校や高専が持つポテンシャルは非常に高いものがあります。企業側がより積極的に連携し、実際の現場で求められる複合的な課題を教育プログラムに組み込むことで、即戦力となるだけでなく、将来の技術革新を担うリーダー候補を早期から育成することが可能になります。インターンシップのあり方も、単なる職場体験に留まらない、課題解決型のものへと進化させる必要があります。
3. 現場技術者のスキルセットのアップデート
機械、電気、情報といった専門分野の垣根は、現場レベルでますます低くなっています。自社の技術者が、専門分野に閉じこもることなく、関連する分野の知識やスキルを積極的に学ぶことを奨励し、そのための教育機会を提供することが、組織全体の競争力維持に不可欠です。OJTにおいても、担当業務の周辺技術に触れる機会を意図的に設けることが重要となります。


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