インドで加速する製造業GCCの設立動向と、日本のものづくりへの示唆

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インドにおいて、グローバル企業が専門機能を集約する拠点「GCC(グローバル・ケイパビリティ・センター)」の設立が加速しています。特に2020年以降、製造業分野での動きが活発化しており、これは単なるコスト削減に留まらない、グローバルな競争戦略の変化を示唆しています。

はじめに:GCCとは何か

GCC(Global Capability Center)とは、企業が自社の特定の業務機能(研究開発、設計、IT、経理、サプライチェーン管理など)を海外に集約して設立する拠点を指します。かつての「シェアードサービスセンター」や「オフショア開発拠点」が主にコスト削減を目的としていたのに対し、近年のGCCはより高度な専門知識や分析能力、イノベーション創出を担う戦略的な拠点として位置づけられています。

インドにおける製造業GCCの急増

元記事の情報によれば、インドには現在1700以上のGCCが存在し、そのエコシステム全体の15~18%を製造業分野のGCCが占めているとのことです。これは、ITや金融サービスだけでなく、ものづくりの領域においてもインドが重要な戦略拠点として認識されていることを示しています。特に注目すべきは、2020年を変曲点としてその設立が加速し、2022年から2024年にかけて新規に設立された製造業GCCの数は、それ以前に比べてほぼ倍増したという点です。この背景には、デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展や、グローバルなサプライチェーンの強靭化に対する意識の高まりがあると考えられます。

製造業GCCが担う機能の変化

今日の製造業GCCが担う役割は、単なる業務のアウトソーシングではありません。製品のR&D、3D-CADを用いた設計、CAE(Computer Aided Engineering)によるシミュレーションや解析、スマートファクトリーを支えるIoT技術の開発、グローバルサプライチェーンのデータ分析と最適化など、非常に高度で専門的な業務が増えています。これらは、日本のマザー工場や開発本部と密接に連携しながら進められる、いわば「頭脳」の一部を分担する機能です。豊富なIT・デジタル人材を抱えるインドの強みを活かし、ものづくりの付加価値をグローバルレベルで最大化しようという狙いがうかがえます。

日本の現場から見たインドGCCの可能性

私たち日本の製造業の現場から見ると、この動きは、グローバルな事業運営における新たな選択肢と捉えることができます。例えば、日本国内では採用が難しいとされるデータサイエンティストやソフトウェアエンジニアをインドのGCCで確保し、日本の工場で収集した生産データを遠隔で分析・解析してもらうといった連携が考えられます。また、日本とインドの時差を利用すれば、日本の設計チームが終えた業務をインドのチームが引き継ぐことで、24時間体制での開発サイクルを構築することも理論上は可能です。もちろん、言語や文化、業務プロセスの標準化など、乗り越えるべき課題は少なくありませんが、人材不足や開発リードタイムの短縮といった経営課題に対する一つの解決策となり得ます。

日本の製造業への示唆

今回のインドにおける製造業GCCの急増という動向は、我々日本の製造業にとっていくつかの重要な示唆を与えてくれます。

1. グローバルな人材戦略の再考:
国内での専門人材(特にデジタル分野)の採用が困難になる中、海外の優秀な人材を活用する手段としてGCCは有効な選択肢です。どこでどのような業務を担ってもらうか、グローバルな視点での人員配置計画がこれまで以上に重要になります。

2. コスト削減から付加価値創出へ:
海外拠点の役割を、単なる「低コストな労働力」と捉える時代は終わりつつあります。現地の専門性をいかに自社の競争力強化に繋げるかという、付加価値創出の視点での拠点戦略が求められます。

3. R&Dおよび設計開発体制の多様化:
研究開発や設計といったこれまで本社機能とされてきた業務も、海外の専門拠点と連携することで、スピードと品質、そして多様な視点を取り入れたイノベーションの向上が期待できます。

4. 現実的な課題への備え:
一方で、海外拠点の運営には、コミュニケーションの壁、知財管理、セキュリティ対策、文化的な違いへの対応など、多くの実務的な課題が伴います。これらのリスクを十分に理解し、管理体制を構築した上で、スモールスタートで検討を進めることが賢明でしょう。

グローバルな競争環境が変化する中で、自社の強みを最大化するためにどのような体制を構築すべきか。インドのGCCの動向は、その一つの可能性を示していると言えます。

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