ポンプ容器の「使い残し」問題が示す、製品設計と顧客満足度の新たな視点

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ある消費者がSNSに投稿した、使い切ったはずのポンプ式容器にまだ多くの内容物が残っていたという報告が注目を集めています。これは単なるクレームではなく、製品の容器設計、顧客満足度、そして持続可能性といった、製造業が向き合うべき本質的な課題を浮き彫りにする事象と言えるでしょう。

SNSで可視化された「もったいない」という感覚

海外のSNSで、ある消費者が使用済みと思われる13本のローションボトルを切り開き、中からまだかなりの量のローションを取り出してみせたことが話題となりました。ポンプではもう吸い上げられないだけで、実際には無視できない量が容器内に残存していたのです。この投稿は多くの消費者の共感を呼び、「自分も同じ経験がある」「最後まで使い切れないのは不便だ」といった声が広がりました。これは、多くの人々が日常的に感じていながらも、明確な形で表明してこなかった潜在的な不満が可視化された瞬間と言えます。

製造現場から見た容器設計のトレードオフ

ポンプ式容器は、衛生的で一回あたりの吐出量を調整しやすく、利便性の高いパッケージとして広く採用されています。しかし、その構造上、どうしても内容物を最後まで使い切るのが難しいという課題を抱えています。ポンプのストローが届かない容器の底や肩の部分に内容物が溜まってしまうのです。内容物の粘度が高ければ、この問題はさらに顕著になります。
もちろん、メーカー側もこの問題を認識していないわけではありません。容器の設計においては、使いやすさだけでなく、製造コスト、量産性、デザイン性、輸送時の強度や安定性など、多くの要素を考慮する必要があります。最後まで使い切れる特殊な構造の容器を採用するには、コストの上昇や生産工程の複雑化が伴う場合もあり、企業は難しい判断を迫られます。現在の一般的なポンプ容器は、こうした様々な制約の中でのトレードオフの結果として選択されているのが実情です。

顧客体験の終点がブランドイメージを左右する

製品の品質がいかに優れていても、「最後まで使い切れず、損をした気分になる」という体験は、顧客満足度を少しずつ損なっていく可能性があります。特に「もったいない」という感覚を強く持つ日本の消費者にとって、この点は無視できません。製品を使い切る最後の瞬間は、その製品に対する総合的な評価が固まる重要なタイミングです。ここでネガティブな印象を与えてしまうことは、リピート購入やブランドへの信頼に影響を及ぼしかねません。
製品のライフサイクル全体、つまり顧客が製品を手に取ってから使い終わり、容器を廃棄するまでのすべてのプロセスを「顧客体験」として捉え、設計を見直す視点が求められます。

持続可能性(サステナビリティ)への貢献機会

この「使い残し」問題は、SDGs(持続可能な開発目標)の観点からも重要です。特に目標12「つくる責任 つかう責任」に照らせば、製品の廃棄ロスを減らすことは製造業の重要な責務の一つです。最後まで使い切れる容器を開発・採用することは、資源の有効活用につながり、環境負荷の低減に貢献します。
近年、多くの企業がサステナビリティへの取り組みを強化していますが、容器の改良による廃棄ロスの削減は、消費者にも分かりやすく伝わる具体的なアクションです。これを企業の社会的責任(CSR)活動の一環として、またブランド価値を高める戦略的な取り組みとして位置づけることも可能でしょう。

日本の製造業への示唆

今回の事象から、日本の製造業が実務レベルで検討すべき点を以下に整理します。

1. 顧客体験の再定義と改善
製品の機能や品質だけでなく、「購入」から「使用終了・廃棄」までの一連の体験を設計の対象と捉え直すことが重要です。特に「使い切る」という最後のプロセスにおける顧客の感情に配慮し、満足度を高める工夫が求められます。アンケートやユーザーテストを通じて、容器の使い勝手に関する生の声を収集・分析することも有効でしょう。

2. 容器設計における「カイゼン」の追求
コストや生産性の制約は常に存在しますが、その中で「使い切りやすさ」を改善する工夫の余地は残されています。底の形状を工夫して内容物が中央に集まるようにする、柔軟性の高い素材で中身を押し出せるようにするなど、既存技術の応用や新たな技術開発が期待されます。日本の製造業が得意とする「カイゼン」の精神を、容器設計にも活かすべき時かもしれません。

3. コミュニケーションによる顧客との関係構築
技術的に完全な解決が難しい場合でも、顧客とのコミュニケーションによって不満を和らげることは可能です。例えば、パッケージに「残り少なくなったらポンプを外し、容器を逆さにしてお使いください」といった丁寧な案内を記載するだけでも、企業の誠実な姿勢が伝わります。正直な情報提供は、長期的な顧客との信頼関係を築く上で不可欠です。

4. サステナビリティを新たな付加価値へ
廃棄ロス削減は、環境配慮という社会的な要請に応えるだけでなく、製品の新たな付加価値となり得ます。詰め替え用パウチの普及など、日本企業は以前からこの課題に取り組んできましたが、容器本体の「使い切りやすさ」を追求することで、サステナビリティへの取り組みをさらに一歩前進させることができます。これは、企業のブランドイメージ向上にも直結する重要な投資と言えるでしょう。

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