ブラジル・ペトロブラス、巨大油田で新FPSOが生産開始 — 遠隔制御技術で生産管理を高度化

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ブラジルの国営石油会社ペトロブラスは、沖合の巨大油田「ブジオス」において、新たなFPSO(浮体式生産貯蔵積出設備)による生産を開始したと発表しました。このプロジェクトでは、遠隔操作で生産を最適化する「インテリジェント坑井システム」が導入されており、資源開発の現場におけるデジタル技術活用の動向として注目されます。

洋上に浮かぶ巨大工場、FPSOが稼働

ブラジルの国営石油会社ペトロブラスは、2024年5月31日、同国沖合のサントス海盆プレソルト(岩塩層下)に位置するブジオス油田において、新たな生産ユニットであるFPSO「Almirante Barroso」が生産を開始したことを明らかにしました。FPSOは「Floating Production, Storage and Offloading system」の略で、日本語では「浮体式生産貯蔵積出設備」と訳されます。洋上で海底から原油やガスを生産し、船体内で処理・精製した上で貯蔵、そして直接輸送タンカーへと積み出すまでの一連の機能を備えた、まさに「洋上の巨大工場」です。

今回稼働したFPSOは、日量15万バレルの石油と日量600万立方メートルの天然ガスを処理する能力を持っています。ブジオス油田は世界最大級の深海油田であり、水深が深く、高い圧力がかかるプレソルト層という過酷な環境での開発となるため、高度な技術力が求められます。

生産管理を高度化する「インテリジェント坑井システム」

本プロジェクトが特筆すべき点の一つに、「インテリジェント坑井(こうせい)システム」の採用が挙げられます。坑井とは、石油やガスを採掘するために掘られた井戸のことです。このプロジェクトでは、生産用の坑井6本と、圧力を維持するために水やガスを注入する圧入用の坑井7本、合計13本の坑井がFPSOに接続されています。

インテリジェント坑井システムは、坑井の内部にセンサーや遠隔操作可能なバルブを設置し、地層の各層からの生産状況をリアルタイムで監視・制御する仕組みです。これにより、陸上やFPSO上の制御室から、各坑井の生産量や圧力などを最適に調整することが可能になります。これは、日本の製造業における工場のスマート化(スマートファクトリー)やIIoT(Industrial Internet of Things)の考え方と通じるものがあります。センサーから得られるデータに基づき、生産設備の状態を常に最適に保つことで、生産効率の最大化と安定稼働を目指すアプローチです。

ブジオス油田の拡張計画と今後の展望

今回稼働したFPSOは、ブジオス油田で6番目の生産設備となります。ペトロブラスは、2027年までにさらに5基のFPSOを同油田に投入する計画を進めており、最終的には合計11基の体制となる予定です。この拡張により、油田全体の生産能力は現在の日量約60万バレルから、将来的に日量200万バレルに達する見込みです。

このような大規模かつ長期にわたる投資計画は、関連するエンジニアリング、機器製造、素材供給といった広範なサプライチェーンに影響を与えます。特に、高温・高圧といった過酷な環境に耐えうる高機能な素材や、精密な制御を可能にする機器・システムに対する需要は、今後も継続していくものと考えられます。

日本の製造業への示唆

今回のペトロブラスの事例は、日本の製造業関係者にとってもいくつかの重要な示唆を含んでいます。以下に要点を整理します。

1. 異業種におけるDX・スマート化の実態把握
資源開発という特殊な環境においても、センサー技術、データ解析、遠隔制御を組み合わせた生産最適化が進んでいます。これは、製造業におけるスマート工場化の動きと本質的に同じ方向性を向いています。自社の技術や製品が、こうした異業種の生産プロセス効率化にどのように貢献できるか、という視点を持つことが重要です。

2. 過酷環境下での技術ニーズ
深海・高圧といった過酷な環境での安定稼働は、部品や素材に対して極めて高い信頼性と耐久性を要求します。これは、日本の製造業が得意とする高品質・高信頼性の技術力が活かせる領域です。プラント向けの制御機器、特殊鋼材、高機能樹脂、各種センサーなど、自社のコア技術が応用できる可能性を探る価値は大きいでしょう。

3. グローバルな巨大プロジェクトとサプライチェーン
世界のエネルギー需要を背景とした巨大プロジェクトは、長期にわたり安定した需要を生み出す可能性があります。自社の製品やサービスが、こうしたグローバルなサプライチェーンの中に組み込まれる機会を常に模索することが、事業の持続的成長に繋がります。一方で、地政学リスクや各国の環境規制の動向なども注視し、サプライチェーンの変動に備える必要もあります。

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