米国の放送業界団体が、将来の担い手育成のために奨学金制度を設けていることが報じられました。この一見、製造業とは無関係に見えるニュースから、我々が直面する人材確保・育成という共通の課題解決に向けたヒントを探ります。
異業種における人材育成への投資事例
先日、米国の放送事業者協会(NBA Foundation)が、放送業界でのキャリアを目指す学生を対象とした奨学金制度を発表しました。この制度は、ジャーナリズムや番組制作、経営、広告といった放送事業の幅広い分野を対象としており、業界全体で次世代の担い手を育てようという明確な意思が感じられます。個々の放送局が独自に行う採用活動とは別に、業界団体が主体となって未来への投資を行っている点は、注目に値すると言えるでしょう。
日本の製造業が抱える構造的課題
一方、我々日本の製造業に目を向けると、人材の確保と育成は喫緊の経営課題となっています。特に、少子高齢化に伴う労働人口の減少や、若者のものづくり離れは深刻であり、多くの現場で技術・技能の伝承が滞る懸念が高まっています。これまで、人材育成は各企業のOJTや社内研修が中心でしたが、事業環境の変化が激しい今日、一企業単独での取り組みには限界が見え始めています。特に、体力のある大手企業と中小企業とでは、採用活動や教育にかけられるコストに大きな差があり、この格差が人材の偏在をさらに助長している側面も否定できません。
業界や地域が連携するアプローチの可能性
このような状況を打開する一つの策として、放送業界の事例のように、業界団体や地域の企業連合が主体となった人材育成プログラムが考えられます。例えば、地域の工業高校や大学と連携した奨学金制度の創設、複数の企業が共同で実施するインターンシップ、あるいは若手技術者を対象とした合同研修会などが挙げられます。こうした取り組みは、一社では難しい魅力的なキャリアパスを学生に提示できるだけでなく、業界全体のイメージ向上にも繋がります。個社の競争という視点から一歩引いて、業界全体の持続可能性という視点に立つことが、結果として各企業の利益にも繋がるのではないでしょうか。
日本の製造業への示唆
今回の異業種の事例から、我々日本の製造業が得られる示唆を以下に整理します。
1. 人材育成の視点を「個社」から「業界・地域」へ
自社の採用・育成だけでなく、業界全体、あるいは事業所が立地する地域全体で、将来の担い手をいかに育てていくかという広い視野が求められます。これは、サプライチェーン全体の維持・強化という観点からも極めて重要です。
2. 未来への投資としての教育支援
奨学金や共同研修といった取り組みは、短期的な成果が見えにくい投資です。しかし、10年後、20年後も日本のものづくりが国際競争力を維持するためには、こうした長期的な視点に立った人材への投資が不可欠となります。
3. 連携による魅力の創出と発信
単独では発信力が弱い中小企業も、業界団体や地域のコンソーシアムとして連携することで、若い世代に対してものづくりの魅力や多様なキャリアの可能性を効果的に伝えることができます。これは、人材獲得競争において非常に有効な戦略となり得ます。


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