MES(製造実行システム)とは?導入を成功させる人材像まで一気に解説【2025年版】

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製造のデジタル化を“現場で回る仕組み”に落とす中核がMES(Manufacturing Execution System:製造実行システム)。ERP(経営・計画)とOT(現場制御)をつなぎ、日々の生産指示・実績・品質・トレーサビリティを秒単位で可視化します。国際標準であるISA-95(IEC 62264)では、工場のレイヤーモデルにおける「レベル3(製造運用管理)」を担い、ERPや制御層とのデータ連携の考え方が体系化されています。


MESの主な機能(MESAモデル準拠)

MESA(Manufacturing Enterprise Solutions Association)のフレームを踏まえると、代表的な機能は次の通りです。

  • 生産スケジューリング/ディスパッチ
  • リソース(人・設備・治工具)管理
  • 作業手順・文書管理(SOP/作業票)
  • 品質検査・不適合管理・CAPA
  • トレーサビリティ/系譜管理(ロット/シリアル)
  • パフォーマンス分析(稼働率・OEE・タクト)
  • 設備保全・予防保全支援
  • 在庫/WIP(仕掛品)管理

ERP・SCADA・PLMとの違いと役割分担

  • ERP:需要予測、購買、在庫、会計など“企業トランザクション”を統括
  • SCADA/PLC:設備の監視・制御。“ミリ秒〜秒”の信号世界
  • MES:計画を現場に落とし、作業/検査/記録を“分〜秒”で統合してERPへ実績を返す
    このインターフェースを設計する拠り所がISA-95です(命名・属性・データ境界の考え方)。

MES導入の狙い(KPI例)

  • OEE・段取り時間・タクトの短縮
  • FPY(初回合格率)・クレーム率の改善
  • 在制品(WIP)・リードタイムの最適化
  • 完全トレーサビリティ監査対応の強化

導入プロセス(現実的ロードマップ)

  1. AS-IS可視化:製造BOM/工程/検査/帳票/システム地図の棚卸し
  2. TO-BE設計:KPI逆算で機能優先度を決定(まずはMVP)
  3. PoC/パイロット:1ラインor1工場で“運用できるか”を検証
  4. 本番展開:マスタ/コード体系・教育・権限・SOPを整備
  5. 多拠点横展開:CoE(センター・オブ・エクセレンス)設置、テンプレ化
  6. 継続改善:ダッシュボード→カイゼン会議→次の自動化へ

導入に強い「7つのコア人材像」

① 製造DXプロダクトオーナー(PO)/PM
KPIオーナー。投資対効果の仮説→計画→リリース→定着まで責任。ISA-95の境界設計を理解し、ベンダーと“成果”で握る。

② OTエンジニア(設備・制御)
PLC/SCADA/センサ/ヒストリアンの実務。データ取り出し、設備イベント標準化、ダウンタイム定義が得意。

③ 製造技術/工程設計(IE/工法)
標準作業・検査ルールをMESのデータ項目へ翻訳。工順・工数・段取りの最適化を主導。

④ 品質保証/規制対応
e署名・監査証跡・変更管理・逸脱/CAPA。医薬・食品等では 21 CFR Part 11GAMP 5 を踏まえたCSV(コンピュータ化システムバリデーション)設計を主導。

⑤ データ/アプリケーションアーキテクト
マスタ(製造BOM/レシピ/リソース)設計、イベントスキーマ、API/B2MML、ETL/ストリーム処理、時系列DB。データ品質と運用の仕組み化に責任。

⑥ セキュリティ/ネットワーク(OTセキュリティ)
ICS/OTのゼロトラスト、ゾーン&コンジット、脅威モデル。ISA/IEC 62443に準拠したレベル設計や要求管理を担う。

⑦ 現場リーダー(班長/職長)
“使われるMES”の鍵。UI/帳票/端末配置/投入・完了の動線など、最後の1mを設計できる人。


スキルマトリクス(例)

役割ISA-95/業務分解設備/OTERP連携品質/規制データ設計変更管理
PO/PM★★★★★★★★★★★★
OTエンジニア★★★★★★★★★
製造技術★★★★★★★★
品質/CSV★★★★★★★
データ/アプリ★★★★★★★★★★★
セキュリティ★★★★★★★★★
現場リーダー★★★★★★★★★

(★は成熟度の目安。採用・教育のギャップ把握に活用)


規制産業(医薬・食品等)の注意点

  • 電子記録・電子署名(21 CFR Part 11):監査証跡、アクセス管理、記録完全性(ALCOA+)を満たす設計
  • GAMP 5:リスクベース/アジャイルにも適合するCSVの実務指針
  • OTセキュリティ(ISA/IEC 62443):ゾーン分割、権限、パッチ/資産管理、リモート保守の統制

よくある失敗と処方箋

  • “全部入り要件”で遅延 → KPI直結の最小構成でMVP化
  • 紙帳票の焼き直し → データ項目を再設計し“後工程で使える粒度”へ
  • マスタ未整備 → 製造BOM/工程/コード体系を先に標準化
  • ベンダー任せ → POが“運用成果”で合意、RACIを明文化
  • 教育不足 → 標準作業×UIの再設計、班長をチャンピオンに

RACI(導入体制のたたき台)

タスクPO/PMOT製造技術品質/CSVデータ/アプリセキュリティ現場
要件定義/KPIRCCCCCC
データモデル/マスタACCCRCC
設備接続/タグ標準化CRCCCAC
CSV/テストCCCRACC
教育/展開ACCCCCR

サンプル求人票(抜粋)

ポジション:製造DXプロダクトオーナー(MES)
ミッション:OEE+8pt/FPY+3pt/リードタイム▲20%を12か月で実現
必須:ISA-95の理解、製造BOM/工程設計の基礎、要件定義〜リリース経験、ベンダーマネジメント
歓迎:PLC/SCADA/ヒストリアン、API/B2MML、Part 11/CSV、62443の知識
主な業務:KPI設計/TO-BE策定/パイロット運用/本番展開/教育と定着化/継続改善


導入チェックリスト(保存版)

  • KPIと対象ラインを数値で特定(現状値・目標・測定法)
  • マスタ標準(製造BOM/工程/リソース/コード)を整備
  • 設備タグ・イベント定義(停止理由・アラーム分類)
  • トレーサビリティ粒度(ロット/シリアル/部材)
  • 権限/監査証跡/電子署名の方針(規制対象ならCSV計画)
  • OTネットワーク分割・リモート保守管理(ゾーン/コンジット)
  • 教育計画(現場チャンピオン選定、SOP更新、評価指標)
  • パイロット→本番→横展開のテンプレ化(CoE設置)

まとめ

  • MESは計画と現場を結ぶ“実行の中枢”。ISA-95に沿って役割とデータ境界を整理すると迷いません。
  • 成功の鍵は人と体制。PO/PM・OT・製造技術・品質・データ・セキュリティ・現場リーダーの7役を明確化し、KPI起点で“小さく始めて素早く定着”させましょう。
  • 規制/セキュリティは初期から織り込み、Part 11/GAMP 5/IEC 62443を指針に“落とし所”を設計するのが近道です。

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