米国の建設機械レンタル業界の幹部が、インフラ投資の恩恵について言及しました。この動向は、政府主導の大型投資が製造業、特にBtoB分野のサプライチェーン全体にいかに大きな影響を与えるかを示唆しています。本記事では、この米国の事例を基に、日本の製造業が学ぶべき点について考察します。
米国のインフラ投資と製造業への波及効果
米国の採石・骨材業界向け専門メディア「Pit & Quarry」に掲載された記事によると、US Equipment Sales & Rentals社の営業担当副社長であるボブ・マイヤーズ氏は、近年のインフラ投資が市場に大きな恩恵をもたらしており、今後もその継続に期待を寄せていると述べています。同社は建設機械や産業機器の販売・レンタルを手掛けており、現場の最前線に近い立場からの発言として注目されます。
インフラ投資は、道路、橋、ダム、公共施設などの建設・補修を目的とするため、直接的には建設業界を潤します。しかし、その影響はサプライチェーンを通じて広範な製造業に及びます。建設機械はもちろんのこと、鉄鋼、セメント、骨材といった基礎資材、さらにはそれらの機械に使われるエンジン、油圧部品、電子制御ユニット、タイヤといった無数の部品メーカーに至るまで、需要が喚起されることになります。これは、特定の最終製品の需要動向とは異なり、より裾野の広い経済効果を生む特徴があります。
設備レンタル市場から見る需要の先行指標
今回、発言しているのが「機器レンタル会社」の幹部である点は、実務上、非常に興味深い視点を提供してくれます。建設機械や産業用機器のレンタル市場の動向は、実際の建設プロジェクトや工場稼働の先行指標として捉えることができるからです。企業が大規模なプロジェクトに着手する際、まずは必要な機械をレンタルで確保する動きが活発化します。そのため、レンタル需要の増減は、数ヶ月先の現場の活況を占う重要なバロメーターとなり得ます。
日本の製造業の経営層や営業部門にとっても、自社の製品が直接関わる市場だけでなく、こうした川下に近い関連市場の動向を注視することは、需要予測の精度を高める上で有効な手段と言えるでしょう。顧客のさらにその先の市場で何が起きているかを知ることで、より能動的な生産計画や営業戦略を立案するヒントが得られます。
安定的需要源としての公共投資の重要性
マイヤーズ氏が「継続的な投資」に期待を寄せている点も重要です。民間の設備投資は景気変動の影響を受けやすく、時には急激に冷え込むリスクを伴います。一方で、政府主導のインフラ投資は、国家の中長期的な計画に基づいて実施されるため、比較的安定的で予測可能な需要源となります。
これは、製造業が中長期的な視点で設備投資や研究開発、人材育成の計画を立てる上で、事業環境の安定化に大きく寄与します。我が国においても、国土強靭化計画やインフラの老朽化対策、さらには次世代通信網の整備といった公共投資は、関連する多くの製造業にとって無視できない事業機会となっています。自社の技術や製品が、こうした社会基盤の構築や維持にどのように貢献できるかを常に模索する姿勢が求められます。
日本の製造業への示唆
今回の米国の事例から、日本の製造業関係者が得るべき実務的な示唆を以下に整理します。
1. マクロ経済政策と自社事業の接続:
政府のインフラ投資やエネルギー政策といったマクロな動きは、一見、自社から遠い話に聞こえるかもしれません。しかし、サプライチェーン全体を見渡せば、新たな需要の源泉となり得ます。自社の技術や製品が、こうした大きな潮流の中でどのような役割を果たせるかを常に検討することが重要です。
2. 川下市場の動向把握による需要予測:
顧客の動向だけでなく、「顧客の顧客」が活動する市場の動きを捉えることで、より精度の高い需要予測が可能になります。本件の建機レンタル市場のように、先行指標となり得る関連市場のデータを定常的に観測する仕組みを構築することは、有効な経営手法と言えるでしょう。
3. 国内の安定需要の再評価:
海外市場の成長性に目が向きがちですが、国内のインフラ更新や防災・減災対策、都市の再開発といった内需は、中長期的に見れば非常に安定した巨大市場です。特に高い品質や信頼性が求められる分野は、日本の製造業の強みが活かせる領域でもあります。足元の事業機会を再評価し、着実に捉えていく視点もまた不可欠です。


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