世界最大の銅生産国であるチリで、本年1月の銅生産量と製造業生産が減少したことが報じられました。銅は多くの工業製品に不可欠な基礎素材であり、この動向は日本の製造業におけるサプライチェーンや調達コストに影響を与える可能性があるため、注意深く見守る必要があります。
報道の概要
チリの国家統計局(INE)が発表したデータによると、2024年1月の同国の銅生産量および製造業生産指数が前年同月比で減少しました。チリは世界の銅生産において支配的な地位を占めており、その生産動向は国際的な銅市場の価格や需給バランスに直接的な影響を及ぼします。
背景にあるもの
銅の生産量が減少する背景には、様々な要因が考えられます。一般的には、鉱石の品位低下、水不足、労働争議、設備の老朽化、あるいは予期せぬ天候不順などが挙げられます。今回の減少の具体的な要因については詳細な分析が待たれますが、これらの構造的な課題は短期的に解決が難しい場合も多く、生産の不安定化が継続する可能性も念頭に置くべきでしょう。また、製造業全体の生産減少は、国内経済の減速を示唆している可能性も考えられます。
日本の製造業への影響
銅は、電線やケーブル、電子部品のリードフレームやプリント基板、自動車のワイヤーハーネスやモーター、さらには建築材料に至るまで、極めて広範な分野で使用されています。そのため、チリからの供給不安は、国際的な銅価格(LME価格など)の上昇圧力となり、日本の製造業にとっては原材料コストの増加に直結します。
特に、部材や原料の仕入れ価格が製品価格に転嫁しにくい中小企業にとっては、収益性を圧迫する深刻な問題となり得ます。調達部門においては、今後の価格推移と供給の安定性を注視し、必要に応じて在庫戦略を見直すなどの対応が求められるでしょう。
日本の製造業への示唆
今回の報道を受け、日本の製造業関係者は以下の点を改めて認識し、自社の事業活動に活かしていくことが重要です。
1. サプライチェーンリスクの再評価
特定の国や地域に依存する原材料の調達は、地政学的リスクや今回のような生産動向によって大きな影響を受けます。銅に限らず、重要な原材料については調達先の多様化(マルチサプライヤー化)や、代替材料の研究・開発の重要性を再認識し、サプライチェーンの強靭化(レジリエンス)を高める取り組みを継続することが求められます。
2. 調達コスト変動への備え
原材料価格の変動は、もはや常態であると捉えるべきです。価格ヘッジのための先物予約の活用や、歩留まり改善による使用量削減、顧客への適切な価格転嫁に向けた交渉準備など、コスト増を吸収し、事業の継続性を確保するための具体的な対策を平時から検討しておくことが不可欠です。
3. 長期視点での技術開発
短期的な対策に加え、長期的には資源価格の高騰や供給不安に左右されにくい事業構造への転換が望まれます。製品設計の段階から銅の使用量を削減する省資源化や、国内でのリサイクル原料の活用率を高める技術開発は、コスト競争力だけでなく、環境対応という観点からも企業の価値を高めることに繋がります。


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