グローバルな包装材メーカーである米シールドエアー社の決算報告から、BtoB事業がいかに最終消費者の動向や顧客の原材料調達環境に影響されるかが見えてきます。この事例は、我々日本の製造業が需要の変動を読み解き、事業計画を立てる上で重要な示唆を与えてくれます。
包装材大手の業績に見る、最終消費市場の「体温」
先日発表された米国の包装材大手シールドエアー社の第4四半期決算報告において、同社の食品包装部門の販売数量が1.1%減少する見通しが示されました。その背景として挙げられているのが「消費者の慎重な姿勢(Consumer Caution)」です。これは、インフレや景気の先行き不透明感から、一般消費者が支出に対して慎重になり、節約志向を強めていることを意味します。結果として、食料品の購入パターンが変化し、包装材の需要にも直接的な影響が及んだものと考えられます。
この現象は、BtoBを主体とする多くの日本の製造業にとっても決して他人事ではありません。自社が供給する部品や素材が、最終的にどのような消費財に使われるのか。その最終市場の「体温」とも言える消費者の心理や購買行動の変化は、巡り巡って自社の受注量を左右する重要な先行指標となります。日々の生産活動に追われると、つい目の前の顧客からの内示情報にばかり目が行きがちですが、その数字の背景にあるマクロなトレンドを把握しておくことが、より精度の高い需要予測につながるのです。
顧客のさらに先へ – サプライチェーン全体を俯瞰する重要性
今回の報告で興味深いのは、販売数量減少のもう一つの要因として「牛肉生産量の減少(Lower Beef Production)」が挙げられている点です。これは、シールドエアー社の顧客である食品加工メーカーが、原材料である牛肉の確保に苦慮している状況を示唆しています。つまり、顧客企業の生産活動が、さらにその上流にある原材料の供給状況によって制約を受け、その結果として包装材メーカーである同社の受注が減少した、という構図です。
この事実は、サプライチェーンを多角的に捉えることの重要性を物語っています。我々は自社の直接の顧客の動向を注視するだけでなく、その顧客を取り巻く事業環境、すなわち「顧客の顧客(最終消費者)」や「顧客の仕入先(原材料市場)」にまで視野を広げる必要があります。特定の原材料の市況や、天候、地政学リスクといった要因が、顧客の生産計画をいかに左右しうるか。そこまで理解を深めることで、予期せぬ需要の変動に対する備えや、より能動的な提案活動も可能になるでしょう。
日本の製造業への示唆
今回のシールドエアー社の事例は、グローバル市場で事業を行う製造業が直面する現実を浮き彫りにしています。この事例から、我々日本の製造業が実務に活かすべき要点を以下に整理します。
1. 最終市場との連動性を意識する
自社の製品がサプライチェーンのどの部分を担い、最終的にどのような市場に繋がっているのかを常に意識することが重要です。特に消費財関連の部材を扱う企業は、消費者動向調査や小売売上高といったマクロ経済指標を、自社の事業環境を測るための定点観測データとして活用することが有効です。
2. サプライチェーン全体を俯瞰する視点を持つ
顧客からのフォーキャストを鵜呑みにするだけでなく、その背景にある要因を分析する姿勢が求められます。顧客の主要原材料の需給バランスや価格動向、関連する法規制の変更といった情報にもアンテナを張り、自社への影響を多角的にシミュレーションすることで、事業リスクの低減と機会の発見につながります。
3. 部門横断での情報共有
営業部門が得たマクロな市場情報や顧客の事業環境に関する知見を、生産管理や調達、開発といった関連部門と密に共有する仕組みが不可欠です。サプライチェーン全体の変化を組織として捉え、迅速かつ的確な意思決定に繋げていくことが、不確実性の高い時代を乗り越えるための鍵となるでしょう。


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