DMG MORI、積層造形技術で切削加工のクーラント供給を自動最適化

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工作機械大手のDMG MORIが、積層造形(AM)技術を駆使したクーラント流量適応制御システム「Adaptive Coolant Flow」を開発しました。加工状況に応じて高圧クーラントの流量を自動で調整し、省エネルギーと生産性向上を両立させる、現場にとって示唆に富む取り組みです。

加工状況に応じてクーラントを最適制御する新発想

DMG MORIが開発した「Adaptive Coolant Flow」は、切削加工中に使用される高圧クーラントの流量を、加工プロセスに合わせて自動で最適化するシステムです。従来の多くの加工現場では、荒加工から仕上げ加工まで、クーラントポンプは常に最大能力で稼働しているのが一般的でした。しかし、この方法では特にクーラント圧をそれほど必要としない仕上げ加工時などに、無駄なエネルギーを消費しているという課題がありました。

本システムは、こうした非効率を解消するために開発されたものです。加工内容に応じてクーラントの圧力と流量を動的に変化させることで、エネルギー消費を抑えつつ、各工程で最適な冷却・切りくず排出効果を発揮することを目指しています。

積層造形が可能にした革新的なノズル機構

このシステムの核となるのが、積層造形(アディティブ・マニュファクチャリング)技術によって製造された「Adaptive Coolant Nozzle」です。この特殊なノズルは、工具の回転速度に応じて内部の弁が自動で開閉する、巧妙な遠心力利用の仕組みを内蔵しています。

具体的には、切りくずの排出が重要となる低速回転での荒加工時には、弁が閉じることでクーラントの圧力を高め、効果的に切りくずを除去します。一方、高い面品位が求められる高速回転での仕上げ加工時には、遠心力で弁が開き、クーラントの流量を抑えることで、ポンプのエネルギー消費を削減します。このような複雑な内部流路と可動式の弁機構を一体で、かつコンパクトに製造するために、従来の切削加工や鋳造では困難な形状を実現できる積層造形技術が不可欠でした。まさに、AM技術の特性を最大限に活かした機能部品と言えるでしょう。

現場にもたらされる具体的なメリット

この技術が実用化されることで、製造現場には複数の具体的なメリットがもたらされます。まず第一に、クーラントポンプの不要な稼働を抑えることによる、大幅な省エネルギー効果が期待できます。これは工場のランニングコスト削減に直結するだけでなく、カーボンニュートラルに向けた企業の取り組みにも貢献します。

第二に、各加工プロセスに最適化されたクーラント供給は、工具の摩耗を抑制し、工具寿命の延長につながります。工具コストの削減や、工具交換頻度の低下によるダウンタイムの短縮も見込めるでしょう。さらに、荒加工時における切りくず処理の効率化は、加工時間の短縮や加工品質の安定化といった、生産性全体の向上に寄与します。日本の工場でも、切りくずの噛み込みや排出不良は、依然として安定稼働を阻害する大きな要因の一つであり、この点の改善効果は大きいと考えられます。

日本の製造業への示唆

今回のDMG MORIの取り組みは、日本の製造業にとっても多くの重要な示唆を含んでいます。

1. 積層造形技術の本格的な実用化:
AM技術が、単なる試作品や治具の製作にとどまらず、機械の性能を決定づける重要な機能部品として実用化されている好例です。特に、内部に可動機構を持つ部品を一体で造形するというアプローチは、製品設計の自由度を飛躍的に高める可能性を示しています。自社製品においても、AM技術でなければ実現できない機能がないか、再検討する価値は大きいでしょう。

2. 「周辺技術」の最適化による全体最適:
クーラント供給という、加工における「周辺技術」や「サブシステム」の改善が、省エネ、コスト削減、生産性向上といった工場全体の大きな課題解決に繋がることを示しています。主たる加工技術だけでなく、それを支える周辺プロセスの中にこそ、大きな改善のヒントが隠されている可能性があります。

3. 当たり前のプロセスを見直す視点:
「クーラントは常に最大流量で供給するもの」という、いわば業界の常識や固定観念を疑い、プロセスの実態に合わせて最適化するという発想が、今回の技術革新の原点です。我々が日々向き合っている自社の製造工程においても、当たり前として見過ごしている非効率な部分がないか、改めて見直すきっかけを与えてくれます。

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