南米コロンビアで、政府の急進的なエネルギー政策が将来の天然ガス不足を招くとの懸念が強まっています。この事例は、脱炭素を目指す上での理想と現実のギャップを示しており、エネルギーコストや供給安定性に大きく依存する日本の製造業にとっても、決して対岸の火事ではありません。
コロンビアで懸念されるエネルギー供給の不安定化
南米の産油国であるコロンビアでは、グスタボ・ペトロ政権が掲げる急進的な環境政策が、国内のエネルギー供給に大きな影を落としています。具体的には、気候変動対策を理由に、新たな石油・天然ガスの探査・開発契約を停止する方針を打ち出しました。この政策は、化石燃料からの脱却という高い理想を掲げるものですが、その一方で、国内のエネルギー自給率を急激に低下させるリスクをはらんでいます。
専門家の分析によれば、このまま国内での新たなガス田開発が進まなければ、コロンビアは2026年にも天然ガスの純輸入国に転落する可能性があると指摘されています。国内で安価に調達できていた天然ガスが枯渇し、国際市場から高価なLNG(液化天然ガス)を輸入せざるを得なくなるのです。これは、エネルギー価格の高騰を通じて、産業界や国民生活に深刻な影響を及ぼすことが予測されます。
政策がもたらす産業競争力への影響
製造業にとって、エネルギーは製品のコストを構成する重要な要素です。特に、化学、鉄鋼、セメントといったエネルギー多消費型の産業では、その影響は計り知れません。エネルギーコストの上昇は、そのまま製品価格に転嫁され、国際市場における競争力の低下に直結します。また、エネルギーの安定供給が脅かされれば、工場の安定稼働そのものが困難になり、生産計画にも支障をきたします。
コロンビアの事例は、良かれと思って進めた政策が、意図せずして国内の産業基盤を揺るがしかねないという現実を示しています。エネルギー政策の転換は、環境への配慮だけでなく、経済安全保障や産業の持続可能性といった観点から、慎重かつ多角的に検討されるべき課題であることを物語っています。
対照的なノルウェーの現実的アプローチ
一方で、同じく産油国でありながら、脱炭素への移行を巧みに進めているのがノルウェーです。元記事でも触れられているように、ノルウェーはコロンビアのように探査を一律に禁止するのではなく、既存油田・ガス田の生産性を戦略的に管理しながら、徐々にクリーンエネルギーへのシフトを進めています。
このアプローチは、国内のエネルギー供給と経済の安定を維持しつつ、長期的な視点で環境目標の達成を目指すものです。理想を追い求めるあまり現実を見失うのではなく、足元の産業や国民生活を守りながら、着実に歩みを進める。この現実的な移行戦略は、多くの国にとって参考になるものではないでしょうか。
日本の製造業への示唆
コロンビアの事例は、エネルギー政策の舵取りの難しさを浮き彫りにしており、我々日本の製造業に携わる者にとっても重要な示唆を与えてくれます。
1. エネルギーリスクの再認識
国のエネルギー政策の動向は、自社の製造コストやサプライチェーンに直接影響を及ぼす重要な経営リスクです。国内外の政策変更や地政学リスクを常に監視し、事業への影響を評価する体制が求められます。
2. 供給安定性の価値
エネルギーは、価格の安さだけでなく、「安定的に供給されること」そのものに大きな価値があります。日本のGX(グリーン・トランスフォーメーション)推進においても、再生可能エネルギーの導入と同時に、既存のエネルギー源を含めた供給網全体の安定性・強靭性をいかに確保するかが重要な論点となります。
3. 現実的な移行計画の重要性
脱炭素は避けて通れない課題ですが、理想論だけでは立ち行きません。産業競争力を維持し、安定した生産活動を継続するためには、段階的で現実的なロードマップが必要です。コロンビアの教訓は、急激な変化がもたらす混乱を避けることの重要性を教えてくれます。
4. 企業レベルでの備え
私たち企業自身も、省エネルギー活動のさらなる徹底や生産プロセスの効率化はもちろんのこと、自家消費型太陽光発電の導入やエネルギー源の多様化など、自衛策を講じていく必要があります。エネルギー価格の変動を前提とした事業計画を立て、不確実性の高い時代を乗り越えるための備えが不可欠です。


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