カナダの家具メーカーSUNPANが、東南アジアに地域オフィスを開設しました。これは、製品開発から生産管理までの機能を現地に集約し、サプライチェーンの競争力を高める戦略的な一手です。本記事では、この事例から日本の製造業が学ぶべきポイントを解説します。
海外生産拠点における「連携」の深化
カナダ・トロントに本社を置く家具メーカーSUNPANが、東南アジアに新たな地域オフィスを開設したことが報じられました。単なる営業拠点ではなく、製品開発、ソーシング(調達)、生産管理といった、ものづくりの根幹に関わる機能を集約させる拠点と位置づけられています。海外に生産を委託する多くの企業にとって、現地サプライヤーとの物理的な距離や時差は、コミュニケーションの障壁となりがちです。同社は、この課題を解決するために、現地での機能統合という一歩を踏み出したと言えるでしょう。
現地チームの組成と物理的なハブの設置
この動きは、決して突発的なものではありません。同社は過去3年間にわたり、製品開発チーム、エンジニア、品質管理、ロジスティクスの専門家を現地で計画的に採用してきました。今回のオフィス開設は、点在していたこれらの専門人材を一つの場所に集め、部門間の壁を取り払う「物理的なハブ」を構築するものです。これにより、迅速な情報共有と円滑な意思決定が可能になります。
日本の製造業においても、海外工場に日本人駐在員を派遣することは一般的ですが、その役割は生産管理や品質保証に限定されることが多いのではないでしょうか。この事例のように、開発初期段階から関わるエンジニアや調達の専門家まで含めた機能横断的なチームを現地に組成することは、製品の市場投入までの時間短縮と品質の作り込みに大きく貢献する可能性を秘めています。
開発リードタイム短縮と品質向上への効果
現地に開発・品質・生産のチームが集結することで、具体的にどのような効果が期待されるのでしょうか。一つは、試作品(プロトタイプ)製作の迅速化です。設計上の問題や改善点を、サプライヤーの現場ですぐに確認し、その場で対策を協議・実行できます。日本本社に図面や試作品を送り、評価を待つといった時間的なロスを大幅に削減できるのです。
また、品質管理の観点からもメリットは大きいと言えます。品質問題が発生した際、あるいはその兆候が見られた際に、現地の専門チームがサプライヤーと直接対話し、根本原因の究明と対策を迅速に行うことができます。これは、問題発生後の対処だけでなく、サプライヤーと一体となった品質の作り込み、すなわち源流管理の強化に繋がります。
日本の製造業への示唆
SUNPAN社の事例は、海外生産拠点の役割を再考する上で、日本の製造業にとっても多くの示唆を与えてくれます。単なるコストセンターとしてではなく、競争力を生み出す戦略拠点として位置づけるためのポイントは、サプライチェーンの「現地化」と「機能統合」にあると言えるでしょう。
サプライチェーンの現地完結性を追求する:
生産だけでなく、開発、調達、品質管理といった関連機能を可能な限り生産拠点に近づけることで、リードタイム短縮と品質安定化を図ることができます。これは、海外生産拠点における「三現主義(現地・現物・現実)」をいかに実践するかという課題への一つの答えです。
機能横断的なチームを現地に構築する:
特定の機能に偏らず、製品ライフサイクルに関わる多様な専門家を現地に配置し、チームとして機能させることが重要です。物理的に同じ空間で働くことで、部門間の連携は格段に向上し、迅速な意思決定に繋がります。
サプライヤーとの関係を深化させる:
現地チームがサプライヤーと密に連携することで、単なる発注者と受注者の関係を超えたパートナーシップを築くことが可能になります。これにより、品質改善や安定供給に向けた共同での取り組みが促進され、サプライチェーン全体の強靭化に貢献します。
グローバルでの競争が激化する中、海外生産拠点の管理・運営手法も進化が求められています。本事例は、コスト削減一辺倒の海外生産から、品質とスピードを追求する戦略的なグローバル生産体制へと転換していく上での、一つの具体的な道筋を示していると言えるでしょう。


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