米国ミシガン州で中小製造業のデジタル化を支援する「Project DIAMOnD」が、新たに金属アディティブ・マニュファクチャリング(AM)のサービス提供を開始しました。この取り組みは、高価な設備投資なしに最新技術へのアクセスを可能にし、地域のサプライチェーン強靭化を目指すモデルとして注目されます。
地域の中小製造業を繋ぐ分散型製造ネットワーク
「Project DIAMOnD(Digital, Independent, Agile, Manufacturing on Demand)」は、米ミシガン州オークランド郡のコンソーシアム「Automation Alley」が主導する、先進的な取り組みです。このプロジェクトは、地域の中小製造業者に3Dプリンターを配布・設置し、それらをデジタルネットワークで繋ぐことで、地域全体を一つの巨大な仮想工場のように機能させる「分散型製造」の構築を目指しています。
もともとは、新型コロナウイルスのパンデミック下で、医療用保護具(PPE)などの不足に対応するため、迅速な地域内生産体制を構築することから始まりました。この経験から、平時においてもサプライチェーンの脆弱性を補い、地域産業の競争力を高めるための恒久的なプラットフォームへと発展しています。
高まる金属AMへの需要に対応
これまでProject DIAMOnDは、主に樹脂(ポリマー)材料を用いた3Dプリンティングの支援に注力してきました。しかし、地域の製造業者からは、より高い強度や耐久性が求められる試作品や最終製品、治具などを製造するために、金属AM技術を利用したいという強い要望が寄せられていました。
今回の発表は、この需要に応えるものです。参加企業は、自社で高価な金属AM装置を導入することなく、プロジェクトが提供するサービスを通じて、金属部品の造形が可能になります。これにより、開発リードタイムの短縮、小ロット多品種生産への対応、あるいは製造現場で用いる特殊な工具や治具の内製化など、活用の幅が大きく広がることが期待されます。
日本の製造現場においても、金属AMは金型の試作・修正や補修部品のオンデマンド生産などで注目されていますが、装置コストや運用ノウハウの習得が導入の障壁となるケースは少なくありません。このような共同利用型のサービスは、中小企業が最新技術の恩恵を受けるための有効な手段と言えるでしょう。
サプライチェーン強靭化への貢献
このプロジェクトの核心は、単なる個別企業への技術支援に留まらない点にあります。ネットワーク化された多数の3Dプリンターの稼働状況を把握し、受注状況に応じて生産能力を融通しあうことが可能です。これにより、特定の企業に注文が集中した場合や、設備トラブルが発生した場合でも、ネットワーク内の他の企業が生産を補完できます。
こうした仕組みは、大規模な自然災害や地政学的リスクによるサプライチェーンの寸断が発生した際に、地域内で迅速に代替生産を行うための基盤となります。グローバルな供給網への依存を低減し、地域経済のレジリエンス(強靭性・回復力)を高めるという、より大きな目的を担っているのです。
日本の製造業への示唆
今回のProject DIAMOnDの取り組みは、日本の製造業にとっても多くの示唆を含んでいます。
1. 最新技術へのアクセス機会の創出
中小企業が単独で高価な製造設備を導入することは、経営上の大きな負担となります。地域の自治体や工業技術センター、業界団体などが主体となり、AMのような先進技術を共同で利用できるプラットフォームを構築することは、地域全体の技術力の底上げに繋がります。これは、既存の公設試験研究機関の機能をさらに一歩進めるモデルとして参考になります。
2. 地域内サプライチェーンの再評価
海外からの部品供給の遅延や停止が事業リスクとして顕在化する中、地域内で調達・生産を完結させる能力の重要性が増しています。AM技術を活用した分散型製造は、必要な時に必要なものを地域内で生産する体制を築く上で、有力な選択肢の一つです。特に、補修部品や生産中止品の製造において、その価値は大きいでしょう。
3. デジタルを介した企業間連携の促進
このプロジェクトの成功の鍵は、物理的な装置の提供だけでなく、それらを繋ぐデジタルネットワークにあります。地域の企業の持つ設備や技術、稼働状況といった情報を共有し、企業間の受発注を円滑にするプラットフォームは、日本の製造業クラスターや系列取引といった既存の連携関係を、より柔軟で強固なものへと進化させるヒントを与えてくれます。


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