Formlabsの製造ネットワークが部品生産5万個を達成 — 3Dプリンタによる分散型生産モデルの現在地

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3DプリンタメーカーのFormlabs社が運営する製造パートナーネットワークが、累計5万個の部品生産を達成したと報じられました。この事実は、3Dプリンタが試作の領域を超え、実用的な生産手段として着実に実績を重ねていることを示唆しています。本稿では、このニュースを基に、製造ネットワークという新しい生産形態の可能性と、日本の製造業が考慮すべき点について解説します。

3Dプリンタメーカーが主導する「製造ネットワーク」

3Dプリンタ大手のFormlabs社は、自社のSLA(光造形)方式およびSLS(粉末焼結積層造形)方式の3Dプリンタを導入している企業をネットワーク化し、部品の製造を希望する企業と結びつける「Formlabs Manufacturing Network」というサービスを提供しています。このたび、このネットワークを通じて製造された部品の総数が5万個に達したことが明らかになりました。これは、単に3Dプリンタという「装置」を販売するだけでなく、メーカー自らが製造プラットフォームを構築し、ユーザー間の受発注を支援するという新しいビジネスモデルが、一定の規模で機能していることを示す事例と言えるでしょう。

こうしたプラットフォームは、いわゆる「オンデマンド製造」や「分散型生産」の一形態と捉えることができます。発注側の企業は、自社で高価な設備を導入することなく、必要な時に必要な数の部品を、ネットワークに加盟する多数のサプライヤーから調達することが可能になります。一方、受注側となる3Dプリンタ保有企業は、設備の空き時間を活用して新たな収益機会を得ることができます。

実生産で活用されるSLA・SLS技術

今回の発表で注目すべきは、製造に用いられている技術がSLA(光造形)とSLS(粉末焼結積層造形)である点です。SLAは、液体樹脂に紫外線を照射して硬化させる方式で、高精細な表面仕上げが特長です。従来は主に、デザイン確認用の試作品や、鋳造用のマスターモデルなどに用いられてきました。一方のSLSは、ナイロンなどの粉末材料にレーザーを照射して焼結させる方式で、強度や耐久性に優れた部品の製造が可能です。治具・工具から、機能性が求められる最終製品の小ロット生産まで、幅広い用途で採用が進んでいます。

「累計5万個」という数字は、これらの技術がもはや特殊な試作手法ではなく、実際の生産現場で頼りにされる選択肢の一つとして定着しつつあることを物語っています。特に、金型が不要であるため、多品種少量生産や、設計変更が頻繁に発生する開発段階での部品供給において、その優位性を発揮します。

日本の製造業への示唆

このFormlabsの事例は、日本の製造業にとっても多くの示唆を含んでいます。以下に、経営、現場、品質管理の視点から要点を整理します。

サプライチェーンの新たな選択肢

従来のサプライヤー網に加えて、こうした3Dプリンタの製造ネットワークを、部品調達の選択肢として検討する価値は高まっています。特に、試作品や保守部品、生産中止となった製品の補修部品など、少量多品種のニーズに対しては、リードタイムの短縮とコスト削減の両面で大きな効果が期待できます。また、国内のネットワークを活用することで、地政学リスクや災害時におけるサプライチェーンの強靭化(BCP対策)にも繋がり得ます。

設備投資思想の変化

すべての製造設備を自社で保有する「自前主義」から、外部の能力を柔軟に活用する考え方へのシフトが一層重要になるでしょう。自社で3Dプリンタを導入する場合でも、初期投資を抑えて小型機から始め、需要の急増や特殊な造形が必要な場合は外部ネットワークを利用する、といったハイブリッドな運用が現実的です。逆に、自社の設備稼働率に課題を抱えている場合は、こうしたネットワークに参加し、新たな受注機会を探るという道も考えられます。

品質保証の新たな課題

分散型生産モデルを活用する上で最も重要な課題は、品質管理です。発注側としては、ネットワーク上のどのサプライヤーが製造を担当するかわからないケースもあるため、プラットフォーム全体として品質をどう保証するのか、という視点が欠かせません。材料管理、造形パラメータの設定、後処理の標準化、検査基準の統一など、発注者と受注者、そしてプラットフォーマーの間で、明確な品質保証体制を構築することが、今後の普及に向けた鍵となります。

今回のFormlabsの事例は、3Dプリンタ技術の成熟と、それを活用した新たな生産エコシステムの胎動を感じさせるものです。日本の製造業においても、こうした世界の潮流を的確に捉え、自社の強みを活かしながら柔軟に新しい技術やサービスを取り入れていく姿勢が、今後ますます求められることになるでしょう。

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