スペインの国際工作機械見本市「BIEMH 2024」において、欧州大手のDanobatgroupが先進的な自動化ソリューションを披露しました。本稿ではその内容を読み解き、日本の製造業が今後目指すべき自動化の姿について考察します。
欧州における自動化の現在地
先日スペインで開催された工作機械見本市「BIEMH 2024」は、欧州の製造業の最新動向を知る上で重要な展示会の一つです。その中で、スペインを代表する工作機械メーカーであるDanobatgroup(ダノバットグループ)が発表した内容が注目を集めました。同社、特に傘下で大型・高精度な工作機械を手掛けるSoraluce(ソラルーチェ)ブランドが提示したのは、「統合生産管理(integrated production management)」という考え方に基づく「インテリジェント自動化ソリューション(Intelligent Automated Solutions)」でした。
これは、単に工作機械にロボットを接続してワークの着脱を自動化するといった、いわゆる「部分的な自動化」の概念から一歩踏み込んだものです。生産に関わる機械、ロボット、計測機器、搬送システムなどを一つの統合されたシステムとして捉え、それらをインテリジェントに制御・管理することで、生産プロセス全体の最適化を目指すというアプローチです。我々日本の製造現場においても自動化は長年の課題ですが、その焦点が「工程単体」から「生産ライン全体、ひいては工場全体」へと移行しつつある世界の潮流を再認識させられます。
「統合」と「インテリジェント」が意味するもの
Danobatgroupが示す「統合生産管理」とは、具体的にどのようなものでしょうか。これは、個々の設備が持つ能力を最大限に引き出すと同時に、工程間の滞留や手待ちといった無駄を徹底的に排除することを目的としています。
例えば、ある部品を加工する場合を考えてみましょう。素材の搬入、工作機械へのセッティング、加工、機上計測、完成品の搬出、次工程への引き渡しといった一連の流れが存在します。統合されたシステムでは、これらの各ステップがデータで連携され、上位の生産管理システム(MESなど)からの指示に基づき、自律的に実行されます。工具の摩耗状態をセンサーで監視し、最適なタイミングで自動交換したり、計測結果を次の加工にフィードバックして精度を補正したりといった、高度な制御も含まれると考えられます。
ここで言う「インテリジェント」とは、まさにこの自律的な判断や最適化を指します。生産計画の変更や、突発的なトラブルが発生した際にも、システム自身が柔軟に対応し、生産効率の低下を最小限に抑える。こうした姿は、人手不足が深刻化し、かつ多品種少量生産への対応が求められる日本の製造業にとって、一つの理想形と言えるでしょう。
部分最適から全体最適へ
日本の工場では、特定の工程に高性能なロボットを導入したり、個別の加工機で自動化を進めたりといった「部分最適」の取り組みは広く行われています。それ自体は非常に価値のある改善ですが、工程と工程の間には依然として人手による段取りや搬送、検査が介在し、そこがボトルネックとなってライン全体の生産性が頭打ちになっているケースも少なくありません。
今回のDanobatgroupの提案は、こうした部分最適の先にある「全体最適」への移行を強く示唆しています。これは、単に設備メーカーが提供するソリューションを導入すれば済むという話ではなく、自社の生産プロセス全体を見渡し、どこをどのようにつなげば最も効果的かを設計する、いわば生産技術の構想力が問われる領域です。機械、制御、ITといった異なる分野の知見を融合させ、自社に合った生産システムを構築していく視点が、今後ますます重要になります。
日本の製造業への示唆
今回の欧州メーカーの動向から、我々日本の製造業が受け取るべき要点と実務への示唆を以下に整理します。
【要点】
- 世界の工作機械業界では、機械単体の性能競争に加え、生産プロセス全体を管理・最適化する「システム」としての提案が主流になりつつある。
- 「統合生産管理」は、設備、ロボット、搬送、計測などをデータで連携させ、生産ライン全体の効率を最大化する考え方である。
- AIやセンサー技術を活用した「インテリジェント化」により、システムの自律的な判断や最適化が可能となり、変化への対応力が高まる。
【実務への示唆】
- 経営層・工場長の方々へ:今後の設備投資を検討する際は、個別の機械のスペックだけでなく、その設備が工場全体の生産システムの中でどのように連携し、貢献できるかという「全体最適」の視点を持つことが不可欠です。自動化のロードマップを描く上で、工程間のデータの流れやモノの流れを再定義することが求められます。
- 生産技術・現場リーダーの方々へ:新しい設備を導入する際には、その機械が持つ通信機能やデータインターフェースに注目し、上位システムや周辺機器との連携を前提とした仕様検討が重要になります。また、自工程の効率化だけでなく、前後の工程を含めたライン全体の生産性向上に貢献する改善とは何かを常に問い続ける姿勢が、今後の現場力の中核となるでしょう。


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