製造業から物流へ:フィリピン大手財閥の戦略転換が示すサプライチェーンの未来

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フィリピンの製造・小売大手であるゴコンウェイ財閥が、物流事業へ本格的に参入しました。この動きは、製造業が自社のサプライチェーンをいかに捉え、事業領域を拡張していくかという点で、我々日本の製造業関係者にとっても重要な示唆を与えてくれます。

フィリピン大手財閥、物流事業へ本格参入

フィリピンで食品・飲料の製造や小売業などを幅広く手掛けるコングロマリット(複合企業)、ゴコンウェイ財閥(Gokongwei Group)が、物流事業へ本格的に進出するとの報道がありました。同財閥は、製造業と小売業を事業の柱として成長してきましたが、ここにきてサプライチェーンの要である物流を、新たな事業領域として強化する戦略を打ち出した形です。

これは、自社グループで製造した商品を、自社の小売店舗まで届けるという一連の流れを、物流機能も含めて内製化・強化しようとする動きと捉えることができます。単なるコスト削減に留まらず、物流を事業の競争力と位置づける戦略的な判断があったものと考えられます。

製造業が物流を手がける背景とは

製造業者が物流事業に踏み込む背景には、いくつかの狙いが見て取れます。第一に、サプライチェーンの垂直統合による効率化と安定化です。自社で物流網をコントロールすることで、輸送コストの最適化、リードタイムの短縮、そして何より輸送品質の維持・向上が可能になります。特に、自然災害のリスクやインフラの課題を抱える地域においては、安定した物流網の確保は事業継続性の観点からも極めて重要です。

第二に、新たな収益源の創出です。自社の物流インフラやノウハウを外部の企業にも提供する、いわゆる3PL(サード・パーティ・ロジスティクス)事業への展開が視野に入ります。製造業で培った緻密なオペレーション管理能力は、物流事業においても大きな強みとなり得ます。自社貨物という安定した基盤があるため、事業リスクを抑えながら外部顧客を開拓できる点も魅力と言えるでしょう。

さらに、近年のEコマース市場の急拡大も背景にあると考えられます。小売事業を持つ同財閥にとって、顧客への迅速かつ確実な配送(ラストワンマイル)は顧客満足度を左右する生命線です。物流機能を自社で持つことは、より柔軟で質の高い配送サービスの実現に直結します。

日本の製造業への示唆

今回のゴコンウェイ財閥の動きは、日本の製造業にとっても示唆に富んでいます。自社の物流を単なる「コストセンター」として外部に委託するだけでなく、「プロフィットセンター」あるいは「競争力の源泉」として捉え直す視点が求められます。

まず、自社のサプライチェーン全体を再評価することが重要です。製品特性や顧客の要求を踏まえ、現在の物流パートナーとの関係性やコスト構造が最適であるか、定期的に見直すべきでしょう。内製化や、より戦略的なパートナーシップの構築など、選択肢は多岐にわたります。

次に、自社が持つアセットとノウハウを棚卸しすることも有効です。製造現場で培われた生産管理、品質管理、カイゼンといったノウハウは、物流現場の効率化にも応用できる可能性があります。自社の強みを隣接領域で活かせないか検討する価値はあります。

また、これは事業領域拡張の可能性も示唆しています。自社の物流機能に余力がある場合、あるいは特定の輸送ノウハウがある場合、それを外部にサービスとして提供し、新たな事業の柱を育てることも視野に入ります。物流への投資は、倉庫管理システム(WMS)や輸送管理システム(TMS)といったDXと連携させることで、サプライチェーン全体の最適化につながり、より大きな効果が期待できるでしょう。

もちろん、全ての企業が物流を内製化すべきというわけではありません。しかし、自社のサプライチェーンにおける物流の位置づけを戦略的な視点で見直すことは、今後の不確実な時代を乗り越える上で重要な一手となるのではないでしょうか。

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