米国の建設資材メーカー、Simpson Manufacturing社の堅調な業績が報じられました。その背景には、建設業界における「オフサイト建設」という大きな潮流があり、日本の製造業にとっても重要な示唆を含んでいます。
米建設資材大手、Simpson社の堅調な業績
米国の建設用接合金物やファスナーなどを手掛けるSimpson Manufacturing社が、堅調な業績を発表しました。直近の2025年第4四半期決算では、売上高が5億3,935万ドル、純利益が5,621万ドルに達したと報告されており、市場からも好意的に受け止められています。単なる好業績というだけでなく、その背景にある事業戦略が、今後の製造業のあり方を考える上で興味深い視点を提供しています。
成長を支える「オフサイト建設」への対応
今回の報道で注目すべきは、同社の成長要因として「オフサイト建設」への対応が挙げられている点です。オフサイト建設とは、工場など建設現場(オンサイト)以外の場所で、建物の部材やモジュールをあらかじめ製造し、現場ではそれらを組み立てることを主とする工法を指します。日本ではプレハブ工法などがこれに該当し、古くから存在する考え方ですが、近年の労働者不足や品質安定化、工期短縮への要求の高まりから、世界的に改めて注目されています。
建設現場での作業を減らし、管理された工場環境で生産を行うこの手法は、まさに建設業の「工業化」と言えるでしょう。Simpson社は、こうしたオフサイト建設に適した高効率な接合金物や固定具、関連ソフトウェアなどを提供することで、建設業界の生産性向上という課題解決に貢献し、自社の成長につなげていると考えられます。
建設の工業化は、製造業の知見が活きる領域
建設業界が工業化へシフトするということは、これまで製造業が培ってきた生産管理や品質管理、サプライチェーンマネジメントといった知見が、そのまま応用できる領域が拡大することを意味します。天候に左右されず、熟練工の技能に過度に依存しない、安定した品質の製品(この場合は建材モジュール)を、計画通りに生産・供給する。これは、まさに工場のものづくりそのものです。
Simpson社の事例は、自社の製品を単なる「モノ」として売るだけでなく、顧客である建設業界のプロセス全体を理解し、その課題解決に貢献する「ソリューション」として提供することの重要性を示しています。単一部品メーカーから、建設プロセス全体の効率化を支援するパートナーへと事業を進化させている好例と言えるでしょう。
日本の製造業への示唆
今回のSimpson社の動向は、日本の製造業にとっても重要な示唆を含んでいます。以下に要点を整理します。
1. 異業種の構造変化に商機を見出す視点
日本の建設業界も、担い手不足や「2024年問題」に直面しており、生産性向上は喫緊の課題です。オフサイト化や建設テックの潮流は、建材メーカーだけでなく、生産設備やロボット、管理システムなどを手掛ける幅広い製造業にとって大きな事業機会となり得ます。
2. 「部品」から「モジュール・ソリューション」への転換
単に高機能な部品を供給するだけでなく、施工の省力化や効率化に直接貢献するモジュール単位での製品提供や、設計・施工を支援するソフトウェアと連携したソリューション提案が、付加価値を高める鍵となります。顧客の業務プロセス全体を俯瞰し、どこに貢献できるかを考える姿勢が求められます。
3. 製造業の強みの再認識と応用
日本の製造業が長年かけて磨き上げてきた、TQC(総合的品質管理)やJIT(ジャストインタイム)に代表される生産管理技術は、建設の工業化において強力な競争優位性となり得ます。自社の持つ技術やノウハウを、異業種である建設分野にどのように応用できるか、改めて検討する価値は大きいでしょう。


コメント