カナダ、防衛装備品の国産化へ舵を切る ― サプライチェーン再編の新たな潮流

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カナダ政府が、防衛装備品の調達において米国メーカーへの依存を減らし、国内生産を優先する「バイ・カナディアン」戦略を打ち出しました。この動きは、単なる一国の政策に留まらず、世界的な経済安全保障とサプライチェーン再編の潮流を象徴するものと言えるでしょう。

カナダ政府、防衛装備品の調達方針を転換

海外報道によれば、カナダ政府は防衛装備品の調達において、これまでの米国製品への依存から脱却し、国内製品を優先的に購入する新たな方針を明らかにしました。この「バイ・カナディアン」戦略は、国内の防衛産業を育成し、約12万5000人の雇用を創出することを目的としています。計画では、軍事費をGDPの5%まで引き上げることも盛り込まれており、国家安全保障と経済成長を両立させる強い意志がうかがえます。

政策転換の背景にあるもの

この方針転換の背景には、近年の国際情勢の緊迫化と、それに伴うサプライチェーンの脆弱性への懸念があります。特定の国からの調達に依存することは、地政学的な緊張が高まった際に、必要な装備や部品の供給が途絶えるリスクを抱えることを意味します。コロナ禍で経験した医療品や半導体の供給網の混乱は、多くの国にとって、基幹産業における国内生産能力の重要性を再認識させる契機となりました。

防衛という国家の根幹に関わる分野において、調達の自律性を高め、国内に技術と生産基盤を確保することは、経済安全保障上の極めて重要な課題です。今回のカナダの決定は、こうした世界的な潮流を反映した具体的な動きと捉えることができます。

日本の製造業から見た視点

この動きは、カナダや防衛産業だけの話ではありません。我々日本の製造業にとっても、いくつかの重要な視点を提供してくれます。まず、世界的にサプライチェーンの「自国回帰」や「ブロック経済化」の流れが加速しているという事実です。コスト効率のみを追求したグローバルなサプライチェーンは、安定性という観点から見直しを迫られています。

これまで海外の安価な部品や材料に依存してきた製造現場では、代替調達先の確保や、国内での生産への切り替えといった検討が、より現実的な経営課題となりつつあります。また、国内に生産拠点を持ち、高い技術力を維持している企業にとっては、こうした潮流が新たな事業機会につながる可能性も秘めています。国内での安定供給能力そのものが、企業の競争優位性として評価される時代が到来しつつあるのかもしれません。

日本の製造業への示唆

今回のカナダの政策転換から、我々日本の製造業が実務レベルで得るべき示唆を以下に整理します。

1. サプライチェーンの再評価と多元化
自社のサプライチェーンにおいて、特定の国や地域への依存度が高まっていないか、改めて点検することが求められます。地政学リスクを事業継続計画(BCP)の重要な要素として組み込み、調達先の多元化や在庫の適正化、代替生産方式の検討などを進める必要があります。

2. 国内生産能力の価値の再認識
コスト一辺倒ではなく、供給の安定性、品質管理の容易さ、技術の維持・継承といった観点から、国内生産拠点の価値を再評価すべき時期に来ています。生産性向上への投資を継続し、国内拠点の競争力を高めておくことが、将来のリスクに対する最良の備えとなります。

3. 「経済安全保障」という新たな事業環境
半導体や重要鉱物、医薬品など、政府が戦略的に重要と位置づける分野では、今後も国内生産を後押しする政策が強化される可能性があります。自社の技術や製品が、こうした大きな社会の要請にどのように貢献できるかを考えることは、新たな事業機会の創出につながるでしょう。

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