パキスタンの防衛展示会出展に学ぶ、事業戦略と生産現場の連携の重要性

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サウジアラビアで開催された防衛展示会におけるパキスタンの動向は、日本の製造業にとっても示唆に富むものでした。それは、事業戦略と生産管理がいかに密接に連携すべきかという、組織運営の根幹に関わる課題を改めて浮き彫りにしています。

事業戦略と生産現場の一体性を示したパキスタンの事例

先日、サウジアラビアのリヤドで開催された「ワールド・ディフェンス・ショー」に関する海外報道の中に、日本の製造業関係者にとっても興味深い一節がありました。それは、出展したパキスタンの防衛産業に関する記述で、「パキスタンの防衛外交は、事業運営のリーダーシップと生産管理が連携して行われていることを示した」と報じられています。ここでの「事業運営のリーダーシップ(operational leadership)」とは、いわば営業やマーケティング、外交といった対外的な戦略部門を指し、「生産管理(production management)」は文字通り、製品を生み出す製造現場の管理部門を指します。

この報道が示唆しているのは、パキスタンの防衛産業が、国家的な戦略目標(外交)と、それを具現化するためのモノづくり(生産管理)を、一枚岩となって推進しているという点です。これは、防衛という特殊な分野に限らず、あらゆる製造業にとって理想的な姿と言えるでしょう。顧客や市場の要求を正確に捉え、それを滞りなく製品として形にする。この一連の流れがスムーズであることこそ、企業の競争力の源泉だからです。

日本の製造業における「戦略と現場の断絶」

このパキスタンの事例を、私たちの日本の製造業の現場に置き換えて考えてみると、どうでしょうか。残念ながら、多くの企業で営業部門と製造部門、あるいは開発部門と生産技術部門の間に、目に見えない「壁」が存在しているのが実情ではないでしょうか。いわゆる「サイロ化」と呼ばれる問題です。

例えば、営業部門が顧客の要望を深く理解せずに安請け合いし、製造現場がその仕様や納期に対応できず混乱する。あるいは、開発部門が生産現場の実力を考慮せずに理想的な設計を行い、いざ量産段階になってから製造上の問題が多発し、手戻りやコスト増を招く。こうした事態は、部門間の連携不足、すなわち事業戦略と生産現場の断絶から生じます。それぞれの部門が部分最適を追求した結果、会社全体としては大きな機会損失や非効率を生んでしまうのです。

全部門が一つの目標に向かうために

この断絶を乗り越えるためには、意識的な取り組みが不可欠です。近年、多くの企業で導入が進むS&OP(Sales and Operations Planning)は、まさにそのための仕組みの一つです。販売計画と生産計画を月次などで定期的にすり合わせ、需要と供給のバランスを最適化することで、部門間の連携を促します。

しかし、こうした仕組みを導入するだけで問題が解決するわけではありません。最も重要なのは、経営層が明確なビジョンと全社的な目標を掲げ、各部門が同じ方向を向いて仕事をする文化を醸成することです。パキスタンの事例は、国策としての防衛産業振興という大きな目標の下で、戦略部門と生産現場が一体となっていることを示唆しています。一企業においても、経営層がリーダーシップを発揮し、部門の壁を越えた情報共有や協力を積極的に奨励する組織設計や評価制度を構築することが、持続的な競争力強化の鍵となるでしょう。

日本の製造業への示唆

今回の海外報道から、日本の製造業が改めて認識すべき要点を以下に整理します。

1. 事業戦略と生産活動の同期
企業の競争力は、顧客や市場と向き合う「戦略部門」と、製品を生み出す「生産現場」が、いかに密に連携し、同期できるかにかかっています。市場の変化や顧客の要望を、迅速かつ正確に生産計画や技術開発に反映させる仕組みの構築が急務です。

2. サイロ化がもたらす弊害の再認識
部門間の連携不足は、単なる非効率やコスト増だけでなく、顧客満足度の低下や新たな事業機会の損失といった、企業の成長そのものを阻害する大きなリスクとなります。この危機意識を、経営層から現場の従業員まで、全社で共有することが重要です。

3. 経営主導による連携強化の仕組みづくり
部門間の連携は、現場の努力任せでは限界があります。経営層が主導し、S&OPのようなプロセスの導入や、部門横断的なKPI(重要業績評価指標)の設定、円滑な情報共有を可能にするITインフラの整備など、連携を促進するための具体的な仕組みを構築・運用していく必要があります。

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