横河電機とANYboticsが協業、プラント巡回点検の自動化を新たな段階へ

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横河電機株式会社とスイスのANYbotics社が、プラントの自動化を促進するための協業を発表しました。本提携は、横河電機のロボット管理プラットフォームとANYbotics社の四足歩行ロボットを統合し、現場の巡回点検業務の高度化と効率化を目指すものです。この記事では、その技術的な背景と、日本の製造現場にもたらす可能性について解説します。

協業の背景:人手不足と安全確保というプラントの恒常的課題

日本の多くの製造プラント、特に化学や石油、電力といったプロセス産業では、熟練作業員の高齢化と人手不足が深刻な経営課題となっています。同時に、安全規制は年々強化されており、危険区域での作業やヒューマンエラーのリスクをいかに低減するかは、現場運営における最重要事項の一つです。こうした背景から、従来は人手に頼らざるを得なかった巡回点検などの定型業務を、ロボットによって自動化・省力化しようという動きが加速しています。

基盤となる二つの技術:横河電機のプラットフォームとANYboticsの四足歩行ロボット

今回の協業の核となるのは、両社が持つ先進的な技術です。一つは、横河電機が開発したロボット管理・連携プラットフォーム「OpreX Robot Management Core」。これは、特定のメーカーに縛られることなく、様々なロボットやドローンを一元的に管理・運用するためのソフトウェア基盤です。重要なのは、プラントの頭脳である分散制御システム(DCS)と直接連携できる点であり、ロボットが収集した情報を現場の運転データと統合して活用することを可能にします。

もう一方は、ANYbotics社が開発した四足歩行ロボット「ANYmal」です。このロボットは、複雑なプラント内にある階段の上り下りや、狭隘な場所、段差のある通路などを安定して自律移動できる能力を持っています。また、国際的な防爆認証を取得しており、可燃性ガスが存在するような危険区域でも安全に運用できる点が大きな特長です。カメラやガス検知器、音響センサーなどを搭載し、人間が行う五感を使った点検作業を代替することができます。

連携がもたらす具体的な価値:中央制御室からの「遠隔臨場」

これら二つの技術が統合されることで、プラントのオペレーションは大きく変わる可能性があります。具体的には、ANYmalが自律的にプラント内を巡回し、計器の読み取り、熱画像の撮影、異音の検知、ガス漏れの有無などを確認します。そして、収集されたデータはOpreX Robot Management Coreを介してリアルタイムで中央制御室のDCSに送られます。これにより、運転員は制御室にいながらにして、現場の状況を詳細かつ客観的なデータで把握できるようになります。

これは、単なる省力化にとどまりません。従来、現場作業員からの報告に頼っていた情報を、定量的かつ継続的に取得できるため、設備の異常の早期発見や予兆保全に繋がります。また、悪天候時や緊急時など、人が立ち入ることが困難な状況下でも、ロボットが代わりに現場を確認することで、安全性を確保しながら迅速な状況判断を下すことが可能になります。

日本の製造業への示唆

今回の協業は、日本の製造業がロボット活用を考える上で、いくつかの重要な視点を提供しています。

1. ロボット活用の深化:「点」から「面」へ
個別のロボットを導入して特定の作業を自動化する「点の活用」から、既存の制御システムや操業管理システムと連携させ、工場全体の最適化を目指す「面の活用」へと移行する流れが明確になりました。ロボット導入を検討する際は、ハードウェアの性能だけでなく、いかに自社の既存システムと連携できるかという「統合性」が重要な評価軸となります。

2. ロボットは新たな「現場の目」
ロボットは単に人間の手足の代わりとなるだけでなく、客観的なデータを収集し続ける「新たなセンサー」としての役割を担います。ロボットが集めたデータをいかに分析し、生産性向上や安全確保、品質改善に繋げるかという、データ活用の視点が不可欠です。これまで熟練者の経験と勘に頼ってきた領域を、データに基づいて管理する仕組みを構築する好機と捉えるべきでしょう。

3. 人とロボットの協働モデルの具体化
危険で過酷、かつ定型的な業務はロボットに任せ、人間はより高度な分析、判断、改善活動といった創造的な業務に集中する。今回のソリューションは、そのような人とロボットの新たな協働モデルを具体的に示すものです。自社の業務を棚卸しし、どの部分をロボットに任せ、人はどこに付加価値を集中させるべきかを再定義することが、今後の競争力を左右する鍵となりそうです。

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