英国製造業の人材育成戦略に学ぶ:若手確保の鍵「アプレンティスシップ」とは

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英国の製造業では、若手人材の不足が深刻な課題となっており、その解決策として「アプレンティスシップ」と呼ばれる見習い実習制度に再び注目が集まっています。この動きは、同様の課題を抱える日本の製造業にとっても、人材育成と技術伝承のあり方を考える上で重要な示唆を与えてくれます。

英国製造業が直面する深刻なスキル不足

近年、多くの先進国と同様に、英国の製造業も深刻な人材不足、特に高度なスキルを持つ若手技術者の確保に苦慮しています。この問題の背景には、少子高齢化に加え、若者の製造業に対するイメージやキャリアとしての魅力の低下があると考えられています。「全国アプレンティスシップ週間」のような取り組みは、こうした現状を打破し、製造業の未来を担う人材をいかにして惹きつけ、育成していくかという、国を挙げた課題意識の表れと言えるでしょう。これは、日本の製造現場が直面している課題と多くの点で共通しています。

解決策として注目される「アプレンティスシップ」

アプレンティスシップとは、日本語では「見習い実習制度」と訳される、英国の伝統的な職業訓練制度です。これは単なる短期的なインターンシップとは異なり、企業に正規に雇用された若者が、給与を受け取りながら長期間(通常1年から数年)にわたって実務訓練(OJT)と専門学校などでの座学(Off-the-Job Training)を並行して行い、公的な職業資格の取得を目指す体系的なプログラムです。企業にとっては、自社のニーズに合致したスキルを持つ人材を計画的に育成できるメリットがあり、若者にとっては、実践的なスキルと安定したキャリアパスを同時に手に入れられるという魅力があります。ドイツの「マイスター制度」にも通じる、実践重視の人材育成システムと言えます。

なぜ今、この制度が重要視されるのか

製造業を取り巻く環境は、デジタル化(インダストリー4.0)や脱炭素化(GX)の進展により、急速に変化しています。求められるスキルも、従来の機械操作や加工技術に加え、データ分析、ロボット制御、新素材に関する知識など、高度化・多様化の一途をたどっています。こうした変化に対応できる人材を育成するには、従来の「先輩の背中を見て覚える」といったOJT中心の育成方法だけでは限界があります。アプレンティスシップのように、体系的な知識教育と計画的な実務訓練を組み合わせることで、変化に柔軟に対応できる問題解決能力の高い中核人材を育てることが、企業の持続的な競争力に不可欠であるとの認識が広がっているのです。

日本の製造業への示唆

英国におけるアプレンティスシップへの再注目は、日本の製造業にとってもいくつかの重要な示唆を与えてくれます。

1. 体系的な人材育成プログラムの再構築
日本のOJTは、時に指導担当者のスキルや経験に依存し、属人的になりがちです。技術伝承が課題となる中、個人の努力任せにせず、企業として育成の標準プロセスを明確に定めた、計画的なOJTとOff-JTを組み合わせた育成体系を再構築することが求められます。これにより、教育の質を担保し、若手社員の着実な成長を支援することができます。

2. 製造業の魅力とキャリアパスの明確化
若手人材を惹きつけるには、給与や待遇だけでなく、製造業という仕事の社会的意義や、自社で働くことで得られる専門性、そして将来のキャリアパスを明確に提示することが不可欠です。英国の取り組みは、業界全体で製造業の魅力を積極的に発信していくことの重要性を示しています。

3. 産学官連携による育成基盤の強化
アプレンティスシップは、企業単独ではなく、政府、業界団体、教育機関が連携して支える仕組みです。日本においても、個社の努力には限界があります。地域の工業高校や高等専門学校、大学との連携を深め、より実践的なカリキュラムを共同で開発するなど、業界や地域全体で人材を育成していくという視点が今後ますます重要になるでしょう。

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