Compass Minerals社の事例に学ぶ、製造業における「選択と集中」の重要性

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米国の鉱物会社Compass Minerals社が、事業の一部売却を「高収益市場への注力」と位置づけていることが報じられました。この動きは、日本の製造業が自社の事業ポートフォリオと生産体制を見直す上で、重要な示唆を与えてくれます。

事業売却を「戦略的な一手」と位置づける経営判断

米国の鉱物・特殊化学品メーカーであるCompass Minerals社は、近年の好調な業績報告の中で、植物栄養事業の一部を売却したことを明らかにしました。同社の経営陣はこの事業売却について、単なる不採算部門の切り離しではなく、「植物栄養事業の拠点を合理化し、より利益率の高い国内市場を優先するための戦略的な一歩」であると説明しています。つまり、経営資源を自社の強みが活かせる高付加価値領域へ集中させるための、前向きな意思決定であると捉えているのです。

日本の製造業における「選択と集中」の現在地

この事例は、私たち日本の製造業に身を置く者にとっても、決して他人事ではありません。多くの企業は、長年にわたる事業拡大の歴史の中で、多様な製品群と国内外に広がる生産拠点を有しています。しかし、市場環境の変化が激しい現代において、すべての事業・製品で高い収益性を維持することは極めて困難になっています。Compass Minerals社の事例が示すのは、「何をやらないか」を決めることの戦略的な重要性です。

自社のコア技術との関連性が薄い事業や、価格競争に陥り利益率が低下している事業を整理することで、得られた経営資源(人材、資金、開発リソース)を、自社の競争優位性が高い分野や将来の成長が見込める分野へ再配分することが可能になります。事業の撤退や売却は、時として痛みを伴う決断ですが、企業が持続的に成長するためには避けて通れない経営課題と言えるでしょう。

生産拠点の合理化とサプライチェーンの再構築

元記事にある「footprintをstreamlineする(拠点を合理化する)」という表現も、示唆に富んでいます。これは単に工場を閉鎖するという意味に留まりません。複数の工場に分散していた生産品目を特定の工場に集約したり、国内外の生産拠点の役割分担を見直したりすることで、サプライチェーン全体の効率を最適化する視点が含まれています。例えば、国内工場は高付加価値製品のマザー工場として位置づけ、海外工場は汎用品の量産拠点とするなど、各拠点の強みを最大限に活かす体制を再構築することが求められます。

また、「利益率の高い国内市場を優先する」という方針も重要です。これは、グローバル展開そのものを否定するものではなく、自社の技術力や品質が正当に評価され、十分な利益を確保できる市場を見極め、そこに注力することの重要性を示しています。いたずらに販売数量やシェアを追うのではなく、収益性を重視した市場戦略への転換は、多くの日本企業にとって喫緊の課題ではないでしょうか。

日本の製造業への示唆

今回のCompass Minerals社の事例から、日本の製造業が実務に活かすべき要点を以下に整理します。

1. 事業ポートフォリオの定期的な棚卸し:
自社のすべての事業や製品群について、市場の将来性、収益性、そして自社のコアコンピタンスとのシナジーを定期的に評価する仕組みを持つことが重要です。聖域を設けず、客観的なデータに基づいて評価を行うべきでしょう。

2. 「捨てる経営」の戦略的意義の認識:
事業の撤退や売却は、失敗ではなく、未来の成長に向けた戦略的な資源の再配分であると捉えるべきです。経営層がこの認識を共有し、明確なビジョンを持って実行することが不可欠です。

3. サプライチェーン全体の最適化:
個々の工場の生産性向上だけでなく、国内外の生産拠点の配置や役割分担を含めた、サプライチェーン全体の視点での最適化が求められます。どの拠点で何を作るのが最も効率的か、常に問い続ける必要があります。

4. 収益性に基づいた市場選別:
売上規模やシェアだけでなく、利益率を重要な経営指標として位置づけ、自社の強みが活かせる高付加価値市場へ経営資源を集中させることが、持続的な成長の鍵となります。

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