医療機器の受託製造(CMO)市場、2032年に1900億ドル規模へ成長予測

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米調査会社DelveInsight社のレポートによると、世界の医療機器受託製造(CMO)市場が2032年までに1900億ドル規模に達すると予測されています。この成長は、医療機器メーカーの研究開発費の増加と、製造のアウトソーシング化という大きな潮流を背景としており、日本の製造業にとっても重要な示唆を含んでいます。

拡大する医療機器の受託製造市場

米国の調査会社DelveInsight社が発表した市場レポートによれば、世界の医療機器受託製造(CMO: Contract Manufacturing Organization)市場は、今後約10年で著しい成長を遂げ、2032年までにはその市場規模が1900億ドル(約28.5兆円 ※1ドル150円換算)に達する見込みです。この背景には、医療機器メーカー(OEM)が直面する事業環境の変化があります。

市場成長を牽引する二つの要因

レポートでは、市場成長の主な要因として「研究開発(R&D)費の増加」と「アウトソーシングへの移行」の二点を挙げています。

第一に、医療技術の高度化・複雑化に伴い、医療機器メーカーの研究開発費は年々増加傾向にあります。メーカーは限られた経営資源を、製品の核となる技術開発や設計、そして販売・マーケティングといった自社のコア業務に集中させたいと考えています。そのため、専門的な製造技術や設備、品質管理体制を要する「ものづくり」の工程を、外部の専門企業に委託する動きが加速しているのです。

第二に、単なるコスト削減を目的としたアウトソーシングから、より高度な専門性や製造能力、そして各国の薬事規制への対応力を求めて外部パートナーを活用する戦略的なアウトソーシングへと変化しています。特に、人命に関わる医療機器の製造には、ISO13485(医療機器の品質マネジメントシステム国際規格)をはじめとする厳格な品質基準や、各国の規制当局(米国のFDA、欧州のCEマーキング、日本のPMDAなど)への対応が不可欠です。これらの専門的な知見と実績を持つCMOへの需要は、今後ますます高まっていくものと考えられます。

日本の製造業が持つ潜在力

この市場の動向は、日本の製造業にとって大きな事業機会となり得ます。日本のものづくり企業が長年培ってきた精密加工技術、徹底した品質管理体制、そして改善を重ねる現場力は、高品質・高信頼性が絶対条件である医療機器分野において、強力な競争優位性となるからです。

特に、部品単体の製造に留まらず、複数の部品の調達、組立(アセンブリ)、滅菌、パッケージングまでを一貫して請け負うことができる「ワンストップサービス」を提供できる企業は、医療機器メーカーにとって価値の高いパートナーとなり得ます。ただし、この分野へ本格的に参入するためには、ISO13485の認証取得や薬事申請に関する専門人材の育成など、相応の先行投資と体制構築が必要となる点も念頭に置くべきでしょう。

日本の製造業への示唆

今回の市場予測から、日本の製造業関係者が考慮すべき点を以下に整理します。

1. 新たな成長市場としての認識:
自動車や電機といった既存の主要市場に加え、医療機器分野は今後長期にわたって安定的な成長が見込める有望な市場です。自社の技術や設備が応用できる可能性はないか、改めて検討する価値は大きいでしょう。

2. 自社の強みの再定義と活用:
「高品質」「高精度」といった日本の製造業の強みは、医療機器CMO市場で高く評価される無形資産です。この強みを、いかにして医療機器分野の要求仕様と結びつけ、具体的な価値として顧客に提案できるかが鍵となります。

3. 専門性への戦略的投資:
医療機器分野への参入は、単なる「下請け」ではなく、品質保証や規制対応といった専門性を持つ「パートナー」としての役割が求められます。ISO13485認証取得や関連法規への対応は、参入のための必須条件であり、中長期的な視点での戦略的な投資判断が必要です。

4. 事業ポートフォリオの多角化:
既存事業の市場環境が変化する中で、企業の持続的な成長のためには事業ポートフォリオの多角化が不可欠です。医療機器CMO市場は、その有力な選択肢の一つとして、経営層が真剣に検討すべきテーマと言えるでしょう。

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