「インダストリアルプランナー」とは何か?- グローバル製造業に学ぶ、生産計画の専門職

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海外の求人情報に、しばしば「インダストリアルプランナー」という職種が見られます。これは、単なる生産計画担当者とは一線を画す、より広範な専門知識を要求される役割です。本稿では、その具体的な業務内容を紐解き、日本の製造業における示唆を探ります。

「インダストリアルプランナー」に求められる専門領域

先日、鉄道車両などを手掛ける仏・アルストム社の求人情報で「Industrial Planner」という職務が募集されていました。その要件には、製造業の根幹をなす複数の専門領域が挙げられており、この職務の重要性と専門性の高さがうかがえます。具体的には、以下の5つの知識が求められていました。

1. Industrial Planning (生産計画):
これは、単に日々の生産スケジュールを組むことだけを指すのではありません。中長期的な需要予測に基づき、工場の生産能力、人員計画、設備投資の必要性などを総合的に計画する、より戦略的な活動を含みます。経営計画と現場の生産活動をつなぐ、重要な役割と言えるでしょう。

2. Production Management (生産管理):
策定された計画を、現場で確実に実行するための管理活動です。進捗の監視、問題発生時の対応、そしてQCD(品質・コスト・納期)の目標達成に向けた日々のオペレーションを円滑に進める実務能力が問われます。日本の現場で言う「生管(せいかん)」の業務と重なる部分が多いですが、より計画との連動性が重視されます。

3. Logistics (物流):
部品や原材料の調達から、完成品の顧客への納入まで、モノの流れ全体を最適化する視点です。サプライヤーからの入荷管理、工場内の工程間搬送(構内物流)、そして出荷・配送管理(構外物流)のすべてを効率化し、リードタイム短縮とコスト削減を目指します。

4. Inventory Management (在庫管理):
部品、仕掛品、製品といったすべての在庫を適切な水準に維持する管理活動です。欠品による生産停止は絶対に避けなければなりませんが、一方で過剰な在庫はキャッシュフローを圧迫し、保管コストも発生させます。需要の変動や供給の不確実性を考慮しながら、リスクとコストのバランスを取る高度な判断が求められます。

5. Material Planning (資材計画):
生産計画に基づき、「いつ」「何を」「どれだけ」調達・供給する必要があるかを計画する業務です。一般的にMRP (Material Requirements Planning) と呼ばれる手法が用いられ、部品表(BOM)と生産計画を基に、正確な所要量計算と発注計画の立案を行います。サプライチェーンの起点となる重要な機能です。

なぜ専門職としての「プランナー」が重要なのか

これらの5つの機能は、もちろん日本の製造業においても日々行われているものです。しかし、多くの場合、生産管理部、製造部、購買部、物流部といった部署ごとに分担されているのが実情ではないでしょうか。

一方で、グローバル化の進展や顧客ニーズの多様化により、サプライチェーンはますます複雑になっています。ある部署での部分最適な判断が、工場全体、ひいてはサプライチェーン全体で見たときに非効率を生んでしまうケースは少なくありません。

「インダストリアルプランナー」という職務は、こうした組織の壁(サイロ)を越え、生産から物流、在庫、資材に至るまでの一連のプロセスを俯瞰し、データに基づいて全体最適な意思決定を主導する「司令塔」としての役割を期待されています。各機能が持つ情報を統合し、変動に強い生産計画を立案・維持することが、その中心的なミッションとなります。

日本の製造現場の強みは、各工程の改善力やチームワークにありますが、その力を最大限に活かすためにも、全体を設計し、舵取りを行う計画機能の専門性は今後ますます重要になるでしょう。

日本の製造業への示唆

今回の求人情報は、グローバルな製造業が生産計画という機能をいかに重視し、専門性の高い職務として位置づけているかを明確に示しています。これを踏まえ、日本の製造業が考慮すべき点を以下に整理します。

1. 生産管理機能の再評価:
自社の生産管理部門の役割が、日々のスケジュール調整や納期回答といった「受け身」の業務に留まっていないか、見直す良い機会かもしれません。需要予測、生産能力計画、在庫最適化といった、より戦略的で「攻め」の計画機能を強化していくことが求められます。

2. 部門横断での情報連携の仕組みづくり:
インダストリアルプランナーのような専門職をすぐに置くことは難しくとも、各部門が持つ情報を連携させ、共同で計画を立案する仕組みは構築可能です。例えば、販売、生産、調達、在庫の情報を月次で共有し、計画を見直すS&OP (Sales and Operations Planning) のようなプロセスを導入することは、全体最適化への第一歩となります。

3. 次世代の工場運営を担う人材育成:
将来の工場長や生産管理のリーダーを育成する上で、特定の専門領域だけでなく、工場運営全体を数字とデータで理解し、計画を立案できる能力が不可欠です。物流、在庫、原価、品質といった幅広い知識を体系的に学ぶ機会を提供し、大局的な視点を持つ人材を育てていくことが、企業の持続的な競争力につながるでしょう。

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