インド新年度予算、製造業の高度化を推進 – 高付加価値化と中小企業支援に焦点

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インド政府が発表した新年度予算は、同国の製造業を新たな段階へ引き上げる戦略的な意図を示しています。本稿では、高付加価値産業と中小企業支援という二つの柱に焦点を当て、日本の製造業にとっての意味合いを考察します。

インド政府、製造業の質的転換を志向

インドの有力紙の報道によれば、同国の2026-27年度国家予算は、国内製造業の戦略的な強化を明確に打ち出すものとなりました。今回の予算案で注目すべきは、単なる生産規模の拡大を追うのではなく、産業構造の高度化、すなわち質的な転換を目指す姿勢が示されている点です。

具体的には、①高付加価値で技術集約型の産業育成、そして②国内経済の基盤を支える中小零細企業(MSME)への支援、という二つが大きな柱として掲げられています。これは、インドが「世界の工場」として、より高度で強靭なサプライチェーンを持つ拠点へと進化しようとする国家的な意思の表れと見て取れます。

高付加価値化とサプライチェーンの基盤強化

「高付加価値・技術集約型産業」への注力は、従来の労働集約的な組み立て産業から、より専門的な知見や技術が求められる分野へのシフトを加速させる狙いがあると考えられます。半導体や電子部品、あるいはEV関連部品といった領域が、今後の重点分野となる可能性が考えられます。日本の製造業の視点からは、インド市場がより高度な部材や製造装置を求めるようになり、同時に現地企業の技術レベルが向上していく未来像が描かれます。

もう一方の「中小零細企業(MSME)支援」は、製造業の足腰を鍛えるための重要な施策です。いかに優れた大企業があっても、それを支える質の高いサプライヤー網がなければ、産業全体の競争力は向上しません。この点は、日本の製造業が長年にわたり協力会社との連携の中で培ってきた強みと通じるものがあります。現地での部品調達や生産委託を検討する日本企業にとって、信頼できる現地パートナー企業の育成が進むことは、事業の安定化に寄与する好材料と言えるでしょう。

日本の製造業への示唆

今回のインド政府の方針は、日本の製造業、特に経営層やサプライチェーン担当者にとって、以下のような実務的な示唆を与えてくれます。

第一に、インドを評価する視点の更新です。「チャイナ・プラスワン」の候補地としてインドを捉える際、単なる人件費の安さや市場規模だけでなく、国策としてどのような産業を育成しようとしているのか、という視点が不可欠になります。特に、自社の事業領域がインドの重点分野と重なる場合、新たな事業機会や、逆に現地企業との競争激化といった変化が予想されます。

第二に、現地サプライチェーンの再評価と構築の好機です。政府の支援によって技術力や品質管理能力を高めた現地中小企業は、新たな調達先や協業パートナーとして有力な候補となり得ます。これまでの取引関係を見直し、より質の高い現地サプライヤー網を構築していくことは、インドにおける生産活動のリスク低減と競争力強化に直結します。

最後に、自社の技術的優位性の再確認が求められます。インドの製造業が高度化する中で、日本企業が提供できる価値は何かを改めて問い直す必要があります。単なる製品供給だけでなく、生産技術の指導や品質管理システムの導入支援など、現地の発展に貢献しながら自社のプレゼンスを確立していく、といった中長期的な視点での戦略構築が重要になるでしょう。

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