異業種に学ぶ、事業の社会的インパクトを担う専門人材育成の動き

global

英国の映像業界において、作品が持つ社会的な影響力を最大化するための専門職「インパクトプロデューサー」の育成プログラムが開始されました。この動きは、自社の事業活動を通じて社会課題解決を目指す日本の製造業にとっても、人材育成や組織のあり方を考える上で重要な示唆を与えてくれます。

映像業界で始まった「インパクトプロデューサー」育成

英国アカデミー賞(BAFTA)の環境サステナビリティ部門であるalbertと、社会的なテーマを扱う映像制作を支援するTogether Filmsが、共同で「インパクトプロデューサー・アクセラレーター・プログラム」を立ち上げました。これは、映画やテレビ番組といった映像作品が、視聴者の意識や行動にポジティブな変化をもたらす「社会的インパクト」を生み出すことを専門に担う人材を育成する取り組みです。

「インパクトプロデューサー」とは、単に作品の制作管理を行うだけでなく、そのテーマ設定から、社会課題に関するキャンペーンの企画、そして公開後のエンゲージメント活動までを一貫して設計・実行する役割を担います。つまり、作品という「製品」を通じて、いかにして社会に良い影響を与えられるかを考え、実現する専門家と言えるでしょう。

事業活動と社会貢献を統合する視点

なぜ今、このような専門職が映像業界で求められているのでしょうか。背景には、世界的なサステナビリティやESG(環境・社会・ガバナンス)への関心の高まりがあります。企業活動は、もはや利益追求だけでは評価されず、事業を通じていかに社会課題の解決に貢献するかが問われる時代になりました。これは、大きな影響力を持つメディアである映像業界も例外ではありません。

この動きは、製造業における「パーパス経営」や「事業を通じたSDGsへの貢献」といった考え方と軌を一にするものです。かつてCSR(企業の社会的責任)活動が本業とは別の活動として捉えられがちだった時代から、事業の根幹に社会貢献を位置づけ、それを競争力の源泉にしようという潮流への変化を反映しています。

製造業における「インパクトプロデューサー」の役割とは

この「インパクトプロデューサー」という考え方を、私たち製造業の現場に置き換えてみると、どのような姿が浮かび上がるでしょうか。それは、製品の企画・開発から、調達、生産、販売、そして廃棄・リサイクルに至るバリューチェーン全体において、社会的・環境的インパクトを最大化する視点を持つ人材です。

例えば、製品開発においては、環境負荷の低い材料やリサイクル性の高い構造を追求する技術者。調達部門においては、サプライチェーン全体の人権や環境リスクを評価し、改善を働きかける担当者。生産現場においては、省エネルギーや廃棄物削減を徹底し、安全な労働環境を維持するリーダー。そして、マーケティング部門においては、製品がもたらす環境・社会的な便益を顧客に正しく伝え、賢明な消費行動を促す担当者などが挙げられます。

こうした各部門の取り組みを、経営戦略やサステナビリティ方針と結びつけ、部門横断で推進する役割が、いわば製造業版の「インパクトプロデューサー」と言えるかもしれません。既存のESG推進室やサステナビリティ部門の役割を、より事業活動と一体化させ、現場の業務にまで落とし込んでいくことが求められています。

日本の製造業への示唆

今回の映像業界の事例から、日本の製造業が学ぶべき点を以下に整理します。

1. 事業活動と社会貢献の統合
社会貢献活動をコストとして捉えるのではなく、自社の「ものづくり」という本業を通じて社会課題を解決するという強い意志を持つことが重要です。環境配慮型製品の開発や、人権に配慮したサプライチェーンの構築は、企業のレピュテーションを高め、新たな事業機会を創出する可能性を秘めています。

2. 専門人材の育成と役割の明確化
サステナビリティに関する深い知見を持ち、それを自社の事業や技術と結びつけて具体的な活動に落とし込める人材の育成が急務です。各部門にそうした視点を持つ担当者を置くと同時に、それらを束ねて全社的な戦略を推進する専門部署や責任者の役割を明確にすることが有効でしょう。

3. ステークホルダーとの対話強化
企業の社会的インパクトは、自社だけで完結するものではありません。顧客、サプライヤー、従業員、地域社会、投資家といった多様なステークホルダーとの対話を密にし、自社の取り組みへの理解と共感を得ていく活動が不可欠です。製品やサービスを通じて、最終消費者や社会全体の意識変革を促していくという視点も、これからの製造業には求められます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました