一見、製造業とは無関係に思える演劇の世界。しかし、一つの作品を創り上げるためのチーム編成や役割分担には、我々の製品開発や工場運営にも通じる普遍的な要諦が隠されています。
異分野に見る「専門性の集合体」としてのチーム
先日、英国の演劇に関する情報として、ある舞台の制作チームが発表されました。その構成は、作曲家、プロダクションマネージャー、衣装デザイナー、キャスティング担当など、多岐にわたる専門家たちから成っていました。これは、一つの優れた作品(プロダクト)を世に送り出すためには、多様な専門技能を持つプロフェッショナルが集い、それぞれの役割を高いレベルで全うすることが不可欠であることを示しています。
単に作業を分担するのではなく、各々が持つ専門知識と技術を結集して一つのゴールを目指す。この「専門性の集合体」という考え方は、複雑化する現代のモノづくりにおいても、改めて注目すべき視点と言えるでしょう。
製造業のプロジェクトチームとの共通点
この演劇のチーム構成は、我々製造業における新製品開発や生産ライン立ち上げといったプロジェクトチームの姿と重なります。製品開発には、機械設計、電気設計、ソフトウェア開発、材料科学といった専門技術者が必要です。そして、その設計思想を具現化するためには、生産技術、品質管理、調達、そして製造現場の知見が欠かせません。
特に注目すべきは「プロダクションマネジメント」という役割の存在です。これは、製造業における生産管理やプロジェクトマネージャーに相当します。各専門部署がそれぞれの業務に集中する中で、全体の進捗、予算、リソースを管理し、部門間の連携を円滑にするハブ機能の重要性は論を俟ちません。日本の製造現場では、時に部門間の壁が課題となることがありますが、このような全体を俯瞰し調整する機能が、プロジェクトの成否を大きく左右するのです。
「作品」から「製品」へ:品質と納期に対する共通の視点
演劇には「開演日」という絶対的な納期が存在し、観客を満足させるという厳しい「品質」基準が課せられます。これは、我々が日々向き合っているQCD(品質、コスト、納期)の思想と全く同じ構造です。衣装担当の仕事が作品の世界観を左右するように、一つの部品の品質、一つの工程の精度が、最終製品の信頼性や性能を決定づけます。
各担当者が自身の持ち場で最高の仕事を追求することが、最終的な製品価値の向上に直結します。個々の専門性を尊重しつつも、チーム全体として「顧客に届けたい価値は何か」という共通のゴールを見失わないこと。異分野の事例は、我々にその基本を再認識させてくれます。
日本の製造業への示唆
今回の演劇制作チームの事例から、日本の製造業が改めて留意すべき点を以下に整理します。
1. 明確な役割分担と専門性の尊重
プロジェクトにおいて、各担当者の役割と責任範囲を明確にすることが基本となります。その上で、設計、生産技術、品質管理といった各分野の専門性を最大限に尊重し、担当者が能力を発揮できる環境を整えることが、全体のパフォーマンス向上に繋がります。
2. プロジェクトマネジメント機能の強化
各専門部署を横断的に繋ぎ、全体の進捗と課題を管理するプロジェクトマネージャーの役割は極めて重要です。特に大規模なプロジェクトや部門間の連携が複雑な案件では、この機能がボトルネックの早期発見と解決を促し、計画通りの生産移行を実現する鍵となります。
3. 最終製品への共通ゴール意識の醸成
各部署が部分最適に陥ることなく、「顧客に優れた製品を届ける」という共通のゴールに向かって連携することが不可欠です。設計段階から製造、品質管理の担当者が密に情報交換を行うことで、手戻りを減らし、QCD全体の最適化を図ることができます。異分野のチームビルディングから、自社の組織連携のあり方を見直す良い機会となるでしょう。


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