製造現場におけるコスト削減や生産性向上の取り組みは、常に重要な経営課題です。海外の生産管理に関する記事から、特に損失が発生しやすい工程への着目と、その管理強化という基本的なアプローチの重要性を再確認します。
損失が発生しやすい「非付加価値工程」への着目
ベトナムの報道で、ある組織の生産管理者が「収穫、輸送、保管」といった損失が発生しやすい領域の管理を強化した、という事例が紹介されていました。これは農業分野の例ですが、日本の製造業においても示唆に富む内容です。製造現場では、材料の投入から加工、組立といった直接的な付加価値を生む工程に注目が集まりがちです。しかし、実際には「原材料の受け入れ・検品」「工程間の運搬」「仕掛品や製品の保管」といった、一見すると付加価値を生まない工程に、多くの損失要因が潜んでいることは少なくありません。
例えば、不適切な運搬による部品の損傷、誤った保管方法による材料の劣化、在庫管理の不備による長期滞留品の発生などは、すべて最終的な製品品質やコストに直結します。これらの工程は、管理の目が届きにくい「死角」となりやすく、意識的に管理レベルを引き上げることが、工場全体の効率化において極めて重要と言えるでしょう。
「管理の強化」をどう具体化するか
「管理を強化する」と一言で言っても、そのアプローチは様々です。重要なのは、現場の状況に合わせて具体的な手法に落とし込むことです。
まず基本となるのが「見える化」です。モノの数量、場所、状態を誰もが正確に把握できる仕組みを構築することが第一歩となります。手書きの管理表から、バーコードやRFIDを用いた個体管理、センサーを活用した保管環境(温度・湿度など)のモニタリングまで、技術レベルに応じた様々な方法が考えられます。
次に、見える化された情報に基づく「ルールの徹底」が求められます。例えば、先入れ先出し(FIFO)の徹底は、材料の品質維持や滞留在庫の防止に不可欠です。また、5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)に基づいた保管場所のルール化や、標準作業手順書(SOP)による運搬方法の標準化も、ヒューマンエラーによる損失を防ぐ上で有効です。
これらの活動から得られるデータを分析し、どこで、どのような種類のロスが、どれくらいの頻度で発生しているのかを定量的に把握することで、より的を射た改善活動へと繋げることができます。
部分最適から全体最適へ:生産管理の連携
元記事では「生産管理の連携」という点にも触れられていました。これは、各工程が個別に管理を行う「部分最適」から脱却し、工場全体、ひいてはサプライチェーン全体での「全体最適」を目指す考え方です。例えば、原材料の受け入れ時の品質データが、後工程である製造部門の設備パラメータ設定にリアルタイムで共有されれば、不良品の発生を未然に防ぐことが可能になります。また、各工程の仕掛品の状況が正確に把握できれば、生産計画の精度が向上し、過剰在庫や欠品のリスクを低減できます。
各部門がサイロ化せず、情報を円滑に共有し、連携して問題解決にあたる体制を築くこと。これこそが、変化の激しい市場環境に対応し、競争力を維持していくための鍵となります。
日本の製造業への示唆
今回の記事から、日本の製造業が改めて確認すべき実務的な示唆を以下に整理します。
1. ロス発生源の再点検:
自社の製造プロセスにおいて、加工や組立といった主要工程だけでなく、「運搬」や「保管」といった非付加価値工程に潜む品質・コスト上のリスクを再評価することが重要です。特に管理が手薄になりがちな領域にこそ、大きな改善の機会が眠っている可能性があります。
2. 基本動作の徹底と見える化:
5Sや先入れ先出しといった基本動作の徹底は、いつの時代も製造現場の土台となります。IoTなどの新しい技術は、これらの基本動作をより確実に実行し、その状態を「見える化」するための強力なツールとして活用すべきです。
3. データに基づいた継続的改善:
勘や経験に頼るだけでなく、各工程から収集されるデータを基に損失の原因を客観的に分析し、改善策を立案・実行するサイクルを定着させることが不可欠です。データドリブンなアプローチが、改善の精度とスピードを高めます。
4. 部門横断での情報連携:
特定の部門だけで改善活動を完結させるのではなく、原材料の受け入れから製品の出荷まで、プロセス全体を俯瞰する視点を持ち、部門間で情報を共有し連携することが、工場全体のパフォーマンス向上に繋がります。生産、品質、物流といった各部門の連携体制を見直す良い機会かもしれません。


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