米国の主要な製造業団体である全米製造業者協会(NAM)は、その傘下にある製造業協会評議会(CMA)の新しいリーダーシップを発表しました。この人事は、サプライチェーンの混乱や労働力不足といった共通課題に対し、米国の製造業全体として政策提言を強化していく姿勢の表れと見られます。
米製造業の声を束ねるNAMの新体制
米国の製造業を代表する最大の業界団体である全米製造業者協会(National Association of Manufacturers: NAM)は、このほど、傘下の製造業協会評議会(Council of Manufacturing Associations: CMA)における新しい議長および副議長の就任を発表しました。CMAは、130を超える米国内の各業種の製造業団体が加盟する連合組織であり、製造業全体の声を政府や社会に届ける上で重要な役割を担っています。
日本の経団連にも相当するNAMのこのような動きは、個別の企業や業界だけでは解決が難しいマクロな課題に対し、業界全体で連携して取り組む姿勢を示すものとして注目されます。
新リーダーの顔ぶれと期待される役割
新しいCMAの議長には、消費財ブランド協会(Consumer Brands Association)のCEOであるジェフ・フリーマン氏が就任しました。また、副議長には米国飲料協会(American Beverage Association)CEOのキャサリン・ルーガー氏と、米国化学工業協会(American Chemistry Council)CEOのクリス・ヤーン氏が就任しています。いずれも各業界を代表する団体のトップであり、その知見と影響力が期待されています。
NAMのCEOであるジェイ・ティモンズ氏は、新リーダーシップに対して「製造業が直面するサプライチェーンの課題、労働力不足、インフレといった逆風を乗り越えるため、強力な政策提言活動を主導してくれるだろう」と期待を寄せています。このコメントからも、喫緊の経営課題に対する危機感と、それらを解決するための政治的な働きかけを重視していることがうかがえます。
背景にある米製造業の共通課題
今回のリーダーシップ交代の背景には、米国の製造業が共通して直面している深刻な課題があります。特に、コロナ禍以降に顕在化したサプライチェーンの脆弱性や、熟練工をはじめとする労働力不足は、多くの企業の生産活動に直接的な影響を及ぼしています。
これらの問題は、一企業の努力だけで解決することは困難です。そのため、業界団体が一致団結し、政府に対して規制緩和、インフラ投資、人材育成策の強化などを求める政策提言(アドボカシー)活動の重要性が増しています。新しいリーダーシップには、こうした業界全体の声を力強く代弁する役割が求められています。
日本の製造業への示唆
今回の米NAMの動きは、日本の製造業にとってもいくつかの重要な示唆を含んでいます。
要点の整理
- 業界横断的な連携の重要性:サプライチェーン、労働力、インフレといった課題は、日米共通の経営マターです。米国では、業界団体が連合体を組織し、政府への働きかけを強めることで、これらのマクロな課題解決を目指しています。
- 政策提言活動の戦略化:個々の企業の声をまとめるだけでなく、戦略的に政策提言を行う業界団体の役割が、事業環境を左右する重要な要素となりつつあります。
- グローバルな視点での情報収集:米国の製造業の政策動向は、為替や貿易ルールを通じて、日本のサプライチェーンや輸出入にも影響を及ぼす可能性があります。海外の業界団体の動きを注視することは、将来のリスクを予見する上で有益です。
実務への示唆
経営層・工場長の方々へ:自社が加盟する業界団体の活動に、より一層の関心を払うことが重要です。団体の会合や情報提供を積極的に活用し、業界全体の課題解決に向けた議論に参加することは、自社の経営戦略を練る上でも有益な視点をもたらすでしょう。また、米国の政策動向が自社の部材調達や販売に与える影響を、常に念頭に置いておく必要があります。
現場リーダー・技術者の方々へ:日々の改善活動や技術開発も重要ですが、自社や業界が置かれている大きな環境変化を理解することは、長期的な視点を持つ上で助けとなります。労働力不足といった課題に対しては、現場レベルでの自動化や多能工化の推進が、業界全体の要請に応える一つの答えになるかもしれません。他国の製造業がどのような課題に直面し、どう対応しようとしているのかを知ることは、自身の業務を見つめ直す良い機会となるでしょう。


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